読売新聞などの大誤報で注目を集めた森口尚史(ひさし)氏(48)。「ハーバード大客員教授」といった肩書を勝手に名乗っていたが、学会では研究成果を貼り出す「ポスター発表」という形を活用し、これも実績としてマスコミに売り込んでいた。
だが、今回の騒動で一連の“企み”は、一気に白日の下にさらされてしまった。10月12日には英科学誌ネイチャーの電子版で、山中伸弥教授らの論文を盗用したとの疑いも報じられており、今後も新たな“疑惑”が浮上するかもしれない。
19日には、何よりも大事な東大という肩書も失った。「大学の名誉を傷つけた」と懲戒解雇になったのだ。
それにしても、森口氏はなぜすぐにばれるウソをつき続けたのか。
『人間関係がうまくいく図解 嘘の正しい使い方 ホンネとタテマエを自在にあやつる!心理法則』の著書がある、新潟青陵大大学院の碓井真史(うすい・まふみ)教授(社会心理学)は、同氏の心理についてこう解説する。
「子どもであれ、大人であれ、必要のないときに必要以上の大きなウソをついて、周囲を困らせる人がいます。森口氏は能力もあって、これまではうまくウソをついてこられたんですね。それで今回もノーベル賞に乗じて、一発当ててやろうと思ったんでしょうが、思いのほか大きく報道されて、結果的にウソがばれてしまったのでしょう」
森口氏の表情やしぐさの端々には、「演技をしている」という感じが漂っているという。
「責め立てられるまでは、いかにも研究者らしい雰囲気を醸し出してました。でも証拠を突き付けられると、途端に膝をガタガタ震わせてしどろもどろになり、子どもっぽくなった。自信たっぷりな演技をしていたのではないでしょうか。本当は『全部ウソでした。ごめんなさい』と言えば片付いていたんですけど、常習的なウソつきの人は常にその場しのぎですから、そういう判断ができないんです」
※週刊朝日 2012年11月2日号