東日本大震災以来、震災対策が注目を集めている。そんな中、国交省の調べで震災の際、重要な役割を担う「緊急輸送道路」の橋梁の耐震補強が不十分で、大地震で落橋や倒壊の危険性があることがわかった。

 1995年の阪神淡路大震災では、橋梁や高架の倒壊によって多くの幹線道路が通行不能になり、救援が後手に回った。その反省を踏まえ、地震の時には被災者の救援や避難、物資の輸送などに優先利用することを目的に、96年に国の指示で自治体が指定したのが緊急輸送道路だ。

 この道路の橋が地震で倒壊するなどして通行不能となれば、当然のことながら阪神大震災の二の舞いとなる。何より車などで通行中の人に甚大な被害を及ぼしかねない。

 このため、国は緊急輸送道路の橋のうち、指定当時、耐震基準を満たしていない約1万3千橋(きょう)の耐震化を進めてきた。

 ところが、都道府県や政令市が管理している国道などの1381橋については、昨年3月の時点で、耐震補強がなされていないことがわかった。

 この1381橋はいずれも、橋梁に新たな耐震指針が示された80年以前に建設された橋で、水平方向の揺れに弱いとされている。阪神淡路大震災で落橋した国道171号の門戸高架橋(兵庫県西宮市)も、そうだった。

 津波と原発事故で目立たなかったが、実は昨年の東日本大震災でも、茨城県の霞ケ浦にかかる国道354号の鹿行(ろっこう)大橋(長さ405メートル)が落橋、橋の上を車で走行中の男性が死亡した。この国道354号がまさに緊急輸送道路で、鹿行大橋も80年以前に建設された橋だった。

 こうした「危ない橋」は、では、いったいどこにあるのか。国交省は無責任なことに、都道府県別の数は把握しているが、橋の名称など詳細は報告を受けていないという。

 緊急輸送道路の「危ない橋」は8都府県で216橋。内訳は東京30、神奈川42、千葉25、埼玉59、愛知4、大阪31、兵庫10、福岡15。長さ1780メートルもある三河港大橋(愛知県豊橋市)など大きな橋も少なくない。

AERA 2012年10月1日号