「未婚少子化」の他に、結婚している男女でも子どもを作らない「既婚少子化」があると指摘する心理学者の小倉千加子氏。夫婦共働きでギリギリの生活を送っているため、そこにもう1人の人間を入れる余地がないためであるという。そんな現代の日本において、もっとも効果的な少子化対策とは――?

*  *  *

 日本で出生率が高い場所に島嶼部がある。沖縄や九州の島である。島ではみな子どもを4人でも5人でも産む。子どもたちの名を村の人は全員知っている。夏には海で泳ぎ、誰かの家に入ってご飯を食べる。学校はあっても塾はない。道路はあっても信号はない。

 人はそういうところでは何かに追われるということがないから、妊孕性(にんようせい)がそのまま残っているのだろう。

 どうすれば少子化が止まるかを知るためには、現に子どもを4人産んでいる30代女性を調べればいい。

 恐らく多くが「幼稚園ママ」(専業主婦)であると思う。基本的に経済は保障されており、時間にもゆとりがある。何より「家庭脳」を阻害する「仕事」がない。

 少子化対策として保育所が新設されても、仕事と保育所を両立しながら生まれる子どもは1人かせいぜい2人である。

 少子化対策に必要なのは保育所ではなく、お金とゆとりと幼稚園なのである。

週刊朝日 2012年10月26日号