エスカレートした中国の反日デモに、被害企業の社員ではなくても心配した人は多いだろう。チャイナリスクの危機意識が高まり、今後は脱中国の動きが加速する可能性もある。
反日感情の高まりから、日本製品の不買運動が広がったり、工場労働者が指揮命令に背いたりする懸念が依然として残る。実際、医療品大手のテルモの担当者は、
「中国の一部の病院ではすでに日本製の医療器具の仕入れを控える動きが出ている。影響がどこまで広がるか見通せない」
とする。さらに、岡三証券の塩川克史・投資戦略部長は言う。
「対日感情が悪化すると、『見えない壁』ができる」
塩川氏は中国に駐在していた05年から今年4月までの7年間にも、尖閣諸島や歴史認識を巡って05年と10年に日中関係の緊張を体験。その時は、表面的な騒動が収まった後でも「日本企業が申請した工場や店舗の許認可が下りない」「送った貨物の通関手続きが大幅に遅れる」などの障壁があったという。
今回も、ハイテク製品に不可欠な希少金属レアアースを禁輸にするなど、中国の「強硬措置」が心配され始めた。ただでさえ、経済成長に伴って労働者の賃金が上昇し、人民元も段階的に切り上げられるなど、中国進出のメリットは薄れつつあった。
そこへきての今回の暴動だ。大和総研の熊谷亮丸・チーフエコノミストはこう見る。
「製造業を中心に、中国以外のアジア諸国に拠点を移す『チャイナ+1』に拍車がかかる」
すでに、ユニクロを展開するファーストリテイリングは「チャイナリスクは一過性ではない」として、ここ数年でバングラデシュやカンボジアに生産拠点を新設し、「脱中国」シフトに動いてきた。
※AERA 2012年10月1日号