中国各地で発生した反日デモ。現地では多くの店舗や企業が被害を受けた。

 日系企業全体の被害額は、数十億円規模に達する可能性がある。青島の「ジャスコ黄島店」を運営するイオンの現地法人は、被害総額は約24億円に上ると公表。同店では、暴徒化したデモ参加者に窓ガラスや店内を破壊され、多くの商品が略奪された。湖南省で営業する百貨店3店舗が襲われた平和堂は、10億円単位の被害を見込む。

 では、被った損害は、誰かに補償してもらえるのだろうか。

 筋論で言えば、賠償や原状回復の責任は加害者にある。青島の警察当局は、今回のデモで工場に放火した疑いや、ジャスコ黄島店を破壊した疑いなどで、多数の中国人を逮捕したと発表。他都市も含め、さらに逮捕者が増える可能性もある。加害者と特定されれば、企業側は彼らに損害賠償を求めることもできるだろう。

 ただし、加害者全員の特定は非現実的で、損害額が大きいほど個人による賠償も困難になる。

 企業にとって現実的なのは、損害保険会社に補償してもらうことだ。もちろん、保険に加入していることが前提で、通常は補償の対象にならない暴動や内乱によって生じた損害もカバーされる特約を結んでいることも条件ではある。ただ、損保大手の東京海上日動火災保険によると、外国にある日系企業の多くがこの特約を追加している。今回の破壊や略奪などは、補償されるケースが多そうだ。

AERA 2012年10月1日号