中国全土で先月18日に起こった反日デモと、2005年に起きた反日デモの違いを豪の東アジア研究者、リンダ・ヤコブソン女史がウォールストリート・ジャーナルで発表した。それを読んだニュースキャスターの辛坊治郎氏は、この見解が「最も欧米識者の平均値に近い」といい、世界がこの一連の騒動をどう見ているかを知ることで、日本は解決への活路が見いだせると結論づける。
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彼女は今回のデモと、7年前のデモの違いを挙げる。
問題は、中国を取り巻く経済情勢の変化だ。7年前の中国は年率10%の経済成長に沸いていたが、現在は8%にも満たない。格差は拡大し、物価が上昇し、共産党幹部の腐敗は目を覆わんばかりだ。この状況の中で国民の不満が反日デモに向かい、それは容易に反政府デモに変化する可能性がある。また、「日本製品の不買や日系企業の排斥運動は、日中両国の経済に長期にわたって深刻なダメージをもたらす可能性がある」とヤコブソン女史は指摘する。
最後に彼女が言及するのは、ソーシャルメディアの急速な普及だ。05年には、1千万人のインターネットユーザーが日本の安保理加入に反対してネット上で集結した。それが現在では、中国のソーシャルメディア利用者の数は3億人を数え、今回の反日デモでは、それらを通じて人々を容易に動かすことが可能だと証明されたのだ。これは中国人民それ自身が、瞬時に、中国共産党指導部にとっての脅威に変わりうる可能性を示唆する。
以上が、オーストラリアの研究者の論文から読み解いた「外国」の目線だ。これを読んでいただくと、世界の見る目が、日本国内での目線とほとんど同じであることに気がつくだろう。つまり一連の騒動を客観的に見ると、問題の多くが中国の国内事情に由来するというのが世界の認識なのだ。
紛争の種を子孫に残さず、安定的に領土を保全するため、今こそ国際世論に訴えて最終的な解決を目指すタイミングではないか。
(週刊朝日2012年10月12日号「甘辛ジャーナル」からの抜粋)
※週刊朝日 2012年10月12日号