相次ぐ重大事故が問題視されている新型輸送機・オスプレイ。沖縄を訪れた早稲田大学国際教養学部の池田清彦教授は、その危険性について貴重な昆虫を絶滅させるのではないかとも指摘している。

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 やんばるの林道を群れ飛ぶ蝶々を見ようと思い、東村(ひがしそん)から国頭村(くにがみそん)を走ってみたのだが蝶が異常に少ない。2010年の秋には一目百頭は飛んでいたツマムラサキマダラも全くいない。蝶の個体数は採集者が採ったり採らなかったりという瑣末なこととは無関係に増減することがよくわかる。東村の高江(たかえ)付近で建設が進むヘリパッド(米軍のヘリコプター着陸帯)に反対する人々が集まって反対闘争をくりひろげていた。ここは、ケブカコフキコガネという冬にのみ出現する珍しいコガネムシの生息地であると同時に、リュウキュウウラボシシジミという、日本では西表島と沖縄本島北部にしか分布しない珍蝶の数少ない生息地でもあるのだ。

 ヘリパッドが建設されてオスプレイが離着陸するようになれば乾燥化が進み、湿った所を好むこれらの昆虫はたちまち絶滅してしまうだろう。生物多様性の保護を旗印にしている環境省がなぜ反対しないのか不思議だ。環境省は採集禁止といった個人の自由を制限する割には多様性の保護にはほとんど役に立たない法律を作るのは熱心だが、生息地を破壊する米軍や国土交通省には何も言えないのだろうね。強者には楯突かず、弱者をいじめる環境省。御立派なことですな。

週刊朝日 2012年10月5日号