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人生はみずからの手で切りひらける。そして、つらいことは手放せる。美容部員からコーセー初の女性取締役に抜擢され、85歳の現在も現役経営者として活躍し続ける伝説のヘア&メイクアップアーティスト・小林照子さんの著書『人生は、「手」で変わる』からの本連載。今回は、壁にぶち当たって前に進めず苦しんでいる人に贈ります。
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「自分の希望とはかけ離れた部署に異動になった」
「いまの上司とはまったく合わないから困った」
「子育てとの両立が厳しくて」
会社勤めをしていると、本当にさまざまなことがあるものです。
でも目の前の問題を乗り越えていくということが、あとから考えれば一番自分を成長させてくれた。そんなことも多いものです。
かつて私にもたくさんの後輩がいましたけれど、辞めていくひとたちを見るたびに思ったのは、「あと、ひと呼吸置いてから、最終決定すればいいのに」ということです。
「もう、いやだ」「つまらない」「しんどい」
皆いろいろな思いがあると思います。
でもそこで「辞める」という選択肢に一直線になっているときというのは、やはり冷静な判断がくだせる状態ではないのです。
私の経験からお話しするならば、そういうとき、だいたい話は「上司の対応の悪さ」などにすり替わっていきます。「自分が相談をしたら、こういう言い方をされた」「こんな反応をされた」。そして一気に「もうこんな会社、うんざり」「もう、やってられない」という気持ちになり、会社を辞めてしまう。本当にもったいない話だと思います。
私も29歳で長女を出産する頃が、一番しんどかったです。
「子どもを産んで、そのあと子どもの預け先は確保できるだろうか」
「働きながら子どもを育てていくなんて、本当にできるのだろうか」
「いまでさえ、体が疲れてたまらないのに、出産後も自分の仕事をこれまで通りにちゃんとこなせるだろうか」
出産前は毎日毎日いろいろなことが不安でした。でも私の中に「辞める」という選択肢がわき上がってきたことは一度もありませんでした。