リーグ優勝からは20年、Aクラスからでも14年遠ざかっている広島東洋カープの人気が高まっている。しかも、なぜか首都圏で。
神宮球場も横浜スタジアムも、時に東京ドームさえも、レフトスタンドから三塁側にかけての一帯が真っ赤に染まる。攻撃時に送られる声援は、ホームチームのそれよりも大きい。
「この2、3年、神宮やハマスタの場所取りの列が倍以上になっています」
興奮気味にそう語るのは、首都圏のカープファンのためのフリーペーパー「Capital」を発行する学生団体の代表、河本健志さん(22)だ。
今季ここまで(9月12日現在)、神宮球場、横浜スタジアム、東京ドームでの最多観客動員試合はいずれもカープ戦だった。交流戦でも、西武ドームで今季3番目に多い観客動員を記録した。そんな首都圏の球場で配布しているCapitalは、創刊当初は1千部だった発行部数が、いまや5千部。首都圏でのカープ人気、本物のようだ。
女性誌などで活躍する読者モデルの大井智保子さん(29)は、女性ファンの増加を指摘する。広島県出身で大学進学を機に上京、いまも関東地方で行われるカープ戦のほとんどに足を運ぶ。
「カープは12球団一のツンデレ球団。振り回してくれるから、女の子はひかれるんです」
弱いと思ってあきらめていたら、スーパープレーで逆転勝ち。試合中は笑顔を見せない選手たちが、ブログは頻繁に更新して明るく振る舞っている。クールかと思えばシャイなだけ。そんなギャップがたまらず、球場に足を運んでしまうのだという。
本誌でコラムを連載中の、ぐっちーさんこと金融評論家の山口正洋氏も大ファン。広島とはビジネス上の接点があるだけだが、マツダスタジアムの年間シートを契約している。山口氏は、ファン目線の経営力をほめる。
「少ない資金をファンのために使っている。ファンを楽しませる球場作り、他球団より種類が豊富なグッズ、ファンクラブを通じた丁寧な情報提供など一生懸命ファンを呼ぶ努力をしている。ドラフト段階からじっくりと選手を選び、育てる姿勢も、本当の野球ファンには響く」
※AERA 2012年9月24日号