■ランキングの読み方と病院選び
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』に掲載している手術数ランキングには、TKA、UKA、HTOのそれぞれの件数を示している。各病院によって治療法の選択基準には方針の違いがあり、そこに病院の特色が表れる。
TKAは耐久性が高く、長期成績が安定しているため、広く普及している手術。そのなかで、UKA件数がTKA件数より多い病院は、UKAを得意とし、それを希望する紹介患者が多く集まる経験豊富な病院と考えられるだろう。
「人工膝関節置換術の対象患者のうちの約半数は、膝関節の内側だけが悪く外側は正常であるなど、UKAが適応となる人」だと、平中医師はみている。
「最近のUKAは耐用年数も20年以上に向上しています。UKAは傷が小さく回復が早いため、高齢者や、早期社会復帰を希望する若い人にもおこなっています。UKAは経験が少ないと再手術率が高くなるため、少なくとも年間10例以上、できれば50例以上の実績があるとよいでしょう」(平中医師)
病院によってはUKAの適応年齢は60歳以上を基本とし、若い患者にはHTOをすすめるところもある。塚田医師は手術数について、次のようにコメントする。
「三つの手術をバランスよくやっていることも、病院選びのポイントになるでしょう。総件数で年100例、UKAとHTOはそれぞれ年に20例くらいを実施している病院なら、ある程度の技術レベルがあるとみていいでしょう」
ひざの痛みはよくなるか、どのくらい曲がるか、再手術の可能性など、それぞれの手術法の利点とリスクを確認して、自身の希望に合う手術を選ぼう。
また、ランキングにはTKAの再置換術件数も示している。
手術時の合併症で感染や骨折が起きてしまったり、人工関節に破損や緩みが生じたりすることが再置換の原因となるが、通常ならその発生率は1%以下だ。
「上位の実力ある病院で、再置換件数の多いところは、むしろ手術のうまい病院である可能性が高いと思います」
そう塚田医師は話す。
「再置換は初回の手術よりも難しく、腕の差が出るのです。そのため熟練した医師のいる病院に患者を紹介するケースが多いといえます」(塚田医師)
保存療法で改善しなければ手術をすることになるが、初めて人工関節の手術を受ける人は、やはり不安が大きいだろう。平中医師はこうアドバイスする。
「思い切って手術を受け、再び歩けて痛みのない生活が送れるようになれば、行動範囲が広がって、その後の長い人生が変わります。説明が丁寧で自信をもって手術をすすめてくれる病院なら、安心できるでしょう」
術後のフォローやリハビリの指導まで、患者の目指すゴールに向かって一緒に治療してくれる病院をぜひ選んでほしい。(文/坂井由美)
≪取材した医師≫
高槻病院 副院長・関節センター長 平中崇文 医師
北水会記念病院 関節外科部長 塚田幸行 医師
※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』より