バイパス手術数とPCI治療数の比率に極端な開きがある場合は、その理由を医師に質問してみよう。
「バイパス手術数とPCI治療数の比率が、1対5から1対10程度が、治療のバランスがとれていると思います。内科と外科が連携して治療をおこなう『ハートチーム』の取り組みが、病院として十分におこなわれているか、指標の一つになります」(岡村医師)
緊急の治療数は、救急患者の受け入れ数ともいえるため、参考になるという。
「急性心筋梗塞の場合、救急の患者さんが救急車で運ばれてきます。その時に最初におこなう治療はPCIです。緊急の治療数が多い病院は、急性心筋梗塞のPCIに多く対応していることになります」(出雲医師)
PCIの中でも難症例と言われるCTOの症例を、どれくらいやっているか、その治療成績を医師に確認してみるのも、その病院の技術力の目安になるという。
「CTOは血管が完全に詰まり、病変が石灰化して硬くなっていることも多く、細心の注意を払って治療することが求められます。全症例の1割ほど実施していれば、手技の高い病院と言えるでしょう」(同)
先述したIVUSのような新しい技術も登場しつつあるが、CTOはまだ医師の高い技術が必要な難しい症例ということができるようだ。
治療数以外で重要なのは、治療後におこなわれるリハビリテーションの充実度だと出雲医師は話す。
「リハビリが充実している病院は、医師以外のスタッフも経験豊富で、細かいフォローが行き届きます」
さらに出雲医師はこう続ける。
「高齢の患者さんは、心臓だけ病んでいるという人は少ないです。他科との連携がスムーズな総合病院は、治療を受けるうえでメリットがあると思います」
病院選びの指標として大切なのは、治療の選択肢をいかに多く提供してくれるかだ。その病院でできない治療でも、治療の選択肢をすべて説明してくれるのが誠実な医師、病院といえるだろう。
その病院でできない治療は、可能であれば近隣でその治療をおこなう病院を紹介してくれて、治療選択の優先順位を正しく示してくれるかが重要だ。(文/伊波達也)
≪取材した医師≫
聖マリアンナ医科大学病院 循環器内科准教授 出雲昌樹 医師
桜橋渡辺病院 循環器内科 冠疾患科長 岡村篤徳 医師
※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』より