次はグレーゾーンの(3)「被写体の承諾はなく、肖像権を侵害」です。もちろん(2)と同様にわいせつ目的ではないことが大前提です。相手の承諾を得ずにこっそり撮影したことに加え、その人の顔をアップで撮る、明らかにその人を狙ったことがわかるように撮った場合です。これは相手から画像の削除を要求されたり、経済的損失が出た場合などは賠償を要求されたりする可能性があります。

 もし、このときに相手が警察官を呼んで「盗撮された」と騒ぎになったとします。しかし、刑事責任が生じるようなことはしていませんので、警察官にはこのトラブルが「民事不介入」の案件であることを伝え、当事者同士での話し合いを進めることになります。

 そして完全に“クロ”なのが、(4)「被写体の承諾はなく、刑罰のある法律や条例に違反する」です。女性のスカートの中を無断で撮影したり、更衣室にカメラを設置し、着替えの場面を隠し撮りしたりするといったわいせつ目的の撮影は迷惑防止条例違反で、明らかな犯罪行為です。

 ところで、迷惑防止条例は全都道府県で制定されているものです。県によって条例の名称や罰金の金額などの規定が異なる場合もありますが、内容自体は大差ありません。

 最近、各都道府県で迷惑防止条例の改正が相次いでいます。ストーカー規制法などもそうですが、現行の法律や条例でカバーしきれない犯罪が多発すれば、それに応じて新たな法律の制定や、条文の改正が行われます。

 ただし、法律には「明確性の原則」という考え方があります。「犯罪行為は、具体的かつ明確に規定されなければならない」というものです。もし、法律の文章が抽象的で漠然としていたり、不明確だったりすると恣意的な法の適用を招く恐れがあります。

 また、そのことによって人々に萎縮的効果をもたらす可能性もあります。

 たとえば、条例には<人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法>という一文がありますが、被害者がそう感じるかどうかなのか、加害者が犯行時に抱いていた気持ちなのかは明確ではありません。ほかにも<通常衣服で隠されている下着又は身体>という一文も、具体性に欠けるあいまいな表現です。

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?
次のページ
スナップ撮影で相手とトラブルになるケースは?