
中国で発生した新型コロナウイルス「2019-nCoV」。中国国内の死者は361人、感染者は1万7205人に拡大した(3日時点、以下同じ)。2003年に流行した新型肺炎「SARS(重症急性呼吸器症候群)」の中国本土の死者は349人だったが、すでにそれを上回っている。
日本でも、20人の感染が確認された。すでに人から人への感染が確認されていることから、スーパーや薬局ではマスクの売り切れが相次いでいる。国立感染症研究所は新型コロナウイルスを培養することに成功し、タイの保健省はインフルエンザ治療薬と抗エイズウイルス薬の混合薬で熱を下げることができたと発表したが、治療薬の開発まではまだ時間がかかりそうだ。
中国国内では、予定されていた女子プロゴルフの大会は中止され、サッカー女子のアジア最終予選の開催地は国外に変更された。日本では、今年7月から東京オリンピック・パラリンピックという国際的イベントが控えている。感染が拡大すればどうなるのかと、不安に感じる人も多いだろう。
その一方で、感染症の専門家は事態の推移を冷静に見ている。2日に金沢市内で開かれた日本臨床微生物学会では、最新情報をもとに新型コロナウイルスについて報告され、感染者には軽症の人が多いことが報告された。
この報告が意味するところは大きい。日本環境感染学会理事長で、東京慈恵会医科大学感染制御科の吉田正樹教授はこう話す。
「武漢市から日本に帰国した565人のうち、8人が新型ウイルスに感染していました。感染率は1.4%で、想定より高い数字でした。これを武漢市の人口約1100万人に当てはめると、単純計算で14万人程度の感染者がいる可能性があります。中国の公式発表より8倍以上多い。一方、日本で発覚した感染者は全員が軽症か無症状。武漢市でも実際にはもっと多くの感染者がいますが、軽症や無症状のために病院に行かず、そのまま回復した人も多いと思われます」