SNSや動画サイトの人気を追い風に、近年続く犬猫ブーム。市場において、価格は需要と供給で決まるが、そもそも犬や猫はどのように取り引きされているのだろうか? 10年以上の膨大な取材をもとに太田匡彦氏が著した『「奴隷」になった犬、そして猫』から一部を抜粋・再構成する(なお、本記事に登場する人物の所属先や肩書は取材当時のものです)。
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消費者のもとに犬たちがやってくるルートには、主に三つのパターンがある。
(1)生産業者(繁殖業者やブリーダー)→ 競り市(ペットオークション)→ 流通・小売業者(ペットショップ)→ 消費者
(2)生産業者(繁殖業者やブリーダー)→ 流通・小売業者(ペットショップ)→ 消費者
(3)生産業者(繁殖業者やブリーダー)→ (インターネット)→ 消費者
これらペットビジネスの中心にあるのが、一般に「ペットショップ」と呼ばれている、生体の流通・小売業者だ。ここでは、ペットショップチェーンのなかでも、いわゆる「大手」とされる3社(コジマ・AHB・ペッツファースト)を見ていこう。
■そもそも、ペットの“値段”はどうきまる?
まずコジマの場合、ここ数年の平均的な仕入れ価格は7~8万円という。対して、平均的な販売価格は15万円程度。つまり粗利率は5割程度となるが、ここから販売にかかった諸経費をひくと、1匹の子犬、子猫を販売しただけでは数千円の利益しか残らないようだ。
小島章義会長はここ数年の生体販売価格について、こう話している。
「ブリーダーの数が減っているため、仕入れ原価は高止まり傾向にあります。私たちの会社では、仕入れ原価に対して、それぞれの個体の歯並びや色など約20項目をチェックしたうえで、1週間の目視期間中に売価を設定しています。粗利は40~45%程度を見ていますが、人件費や販管費を入れると、1頭あたりのもうけはかなり少なくなるのが現実です。ですから、私たちのお店で子犬や子猫を買った方には、フードの購入や動物病院の診療、トリミングなどのサービスのために、また来店していただきたいというのが大前提にあります」