「最高の」「最優秀の」「この上ない」という意味を持ったSupreme(シュプリーム)を形式に冠したN700Sの先頭車形状の設計は、最後尾になった際に真価を発揮するというところが面白い。あまり形に違いがないと思われがちなN700Sだが、目立たないながらも大きな進化を遂げている。
なかなか見えることのないパンタグラフも、保守の低減と軽量化のため基部を小型化、幅を14cm狭くしたことで、支持ガイシが3本から2本になった。大きく変わったのは集電シュウだ。従来はトロリ線(架線)と接触する集電シュウのスリ板部分は一体で製造され、それ全体をバネで支える構造だったが、スリ板を10枚に分割し、それぞれを小型のバネで支持する方式に改めている。これによりトロリ線への追従性が良くなり、トロリ線やスリ板の摩耗につながるスパーク(これも騒音の原因の一つ)の発生を抑制している。また、バネ部分が小型化されたことによって、集電シュウのバネの出っ張りがなくなり、集電シュウから発生する車体空力音も抑制されている。
■見た目では分からない車体の大きな変更点
N700Sの中間車は、見た目からはN700Aとほとんど変わりないように見えるが、側面は全面的にダブルスキン構造となっている。ダブルスキン構造とは、側板の外側と内側とをアルミ合金の押し出し成形材で一体として製造するもので、溶接で組み立てるものではないので信頼性が高く、強度がアップして気密性も非常に高いものとなる。
700系では屋根と側板は客室部分のみダブルスキン構造、N700Aでは側扉部分などは別体で製造されたものを溶接で組み立てていたが、N700Sでは側面全体ですべてダブルスキン構造を採用した。窓や側扉部分は後からくり抜いて製造される。このようにパーツを溶接することがないので、製造工程の簡略化と共に、品質向上も達成している。同時に従来は側板下部に溶接されていた室内の床板を支える床受けも側板と一体となっている。こうすることが溶接部分の削減と、車内の気密性、静粛性にも一役買っている。
また、N700Aでは屋上に設置されていた特高ケーブルは、N700Sでは屋根のダブルスキン構体の中に通す方法に変更された。これにより車体外部の出っ張りを少なくすることができ、車体空力音と呼ばれる風切り音の抑制と、騒音の低減が図られている。
なお、前部標識灯(前照灯)の設計手法も従来とは少々異なる。N700Sではあらかじめ設定した照射範囲から、光源位置を逆算して設計するという手法が用いられた。こういった細かい照射範囲の設定が可能となったのも、光源に使用しているLEDならではだろう。同時に長寿命化と低消費電力を実現した。さらにライトケースを極力最前部に設置することで、駅や車両基地内などで必要となる路面照度の改善を図っている。(文/高橋政士)