今回の旅でもう一つ、印象的だったのは10年以上前にアジアを回ったときに比べて、日本語の看板が少なくなったことです。かつては街の至るところに日本製の家電やブランドの広告がありましたが、企業の広告費も減っているんでしょうね。当時は、日本企業も世界がお客さんだっただろうし、国内の少ないパイを取り合う必要はそこまで無かったんでしょう。それが今では、国内の客に嫌われたらビジネスが立ち行かなくなる。だからスポンサーという立場でも、いろいろなことをコントロールしたくなり、悪循環になっていってしまう。すべてが経済だなと思いました。

 僕も含め多くの日本人は、GDPが世界2位と言われていたころの記憶を引きずっていると思うけど、一歩、海外に出てみたら、当時はちょっと遅れている国として見ていたような東アジアの国々が、日本のずっと先を行っていることに気付かされたりする。最近、中国や台湾のネット事情を知るたびに、黒船が来て「えっ!?」って驚いた人たちのようなカルチャーショックを受けています。

 中国はネット事情がまた違うけど、日本に来ている中国人観光客が持っていたスマートフォンの外国語翻訳の性能がすごく良かったり、日本は道路が狭いとか建物が古いと言っていたのも驚きました。僕らは隣国、隣人のことさえ全く見ていなかったんじゃないか。既に遅れを取り始めているんじゃないかと危機感も持ちます。

 振り返れば、15年前にホリエモンがテレビ局を買収しようとしたとき、我々は「あいつは何者だ!」ってストップをかけたけど、買収されていたら今頃どうなっていたんだろうか。海外で通用する日本発の動画配信サービスができていたり、ITやメディア業界、エンターテインメントが大きく変わるようなことになっていたんではないだろうか、などと考えてしまうようになっています。何もかも世界基準に合わせる必要はないし、日本らしさが僕は好きだけど、世界から見てどんな立ち位置にいるのかも、ちゃんと知るべきかなとも思います。

次のページ