個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。
* * *
明けましたね、2020年。今年も精神年齢8歳の50歳児をどうかひとつ。
ツイッターにも書きましたが、新年早々、精神年齢8歳を実証するかのような出来事が佐藤家で勃発しました。
窓のヘリに左手の人さし指を引っ掛けてしまい、見ると爪から血が滲んでいました。「ギャアアアアアア爪がああああ爪から血がああああああああああ」。激しく動転した僕は、すぐさま我が家のドラえもん(妻)に救済を仰ぎます。「お母さあああんお母さあああん爪からあああ爪から血があああああ早くうううう一刻も早く処置ををををををを」。
一方、妻は半笑い。というか、ほぼ笑っています。断っておきますが、決して妻を笑わせるために爪から血を滲ませた訳ではありません。妻は笑いを噛み殺しながら「…るっさい、うるっさい、絆創膏貼っときゃ、こんなモンすぐ治る」。そう言って絆創膏を貼ってくれる妻に「だってええええええ血がああああ爪から血がああああああああ」と激しく騒ぎ立てる僕。
あのですね。妻だけでなく、皆さんを笑わせるつもりもありません。皆さんを笑わせるために「爪がああああ爪から血があああああ」とか書いてる訳ではありません。事実なのです。客観的に述懐して書いています。冷静に事実をありのまま書いています。妻の指摘通り、たった半日で治った左手でガラケーを握りながら書いています。
以前、自宅で旅行の準備をしている時、持ち上げたキャリーバッグが開いてしまい、せっかく詰めた荷物が全部出てしまったことがあります。こんな時、普通の大人なら、荷物が全部出てしまう前に瞬時にキャリーバッグの傾きを修正するなどして、被害を最小限に食い止めるものだと思います。しかし僕はこの時も、「あああああアアアアあああああアアアア」と騒いだだけ。ノーモア処置。ノーモアどころか、ただのノー。ノー対策。いわゆる、無策。完全に無策。一部始終を見ていた妻は半笑い。正確には爆笑。大爆笑。