男性は知人の売人から大麻を購入し、週数回の喫煙を続けていたという。
気になるのは人体への影響と依存性についてだ。厚労省のHPには以下のような文言が並ぶ。
「大麻を乱用すると、記憶や学習能力、知覚を変化させます。乱用を続けることにより、『無動機症候群』といって毎日ゴロゴロして何もやる気のない状態や、人格変容、大麻精神病等を引き起こし、社会生活に適応できなくなります。また、女性も男性も生殖器官に異常が起こります」
大麻を長期間にわたって使用した場合の影響については、麻薬・覚せい剤乱用防止センターのHP上では「乱用を止めてもフラッシュバックという後遺症が長期にわたって残るため軽い気持ちで始めたつもりが一生の問題となってしまう」と警鐘を鳴らしている。
対照的に、医療の現場からは大麻の毒性や依存性はそこまで高くないという研究結果も出ている。薬物依存症に詳しい、町田まごころクリニックの鹿島直之院長はこう話す。
「1999年に米国医学研究所による薬物の依存性を比較した調査によると、大麻の使用者で依存症になるのは9%ほど。アルコールは15%、煙草は32%ですから、大麻の依存性は低いことがわかります。その例として、アメリカのオバマ前大統領は高校時代に大麻と煙草を使用していたことを告白していますが、大麻は1時的な使用でやめられたようです。一方で禁煙については大統領就任後も苦労していました」
大麻には鎮痛作用や吐き気を抑える“薬”としての効果があるとされる。アメリカではがんによる痛みと抗がん剤の吐き気に対処するために緩和ケアなどで用いられており、国内でも医療用として使用を認めるよう求める声があがっている。
「日本の緩和ケアではオピオイドというモルヒネと同じ効用を持つ鎮痛薬を使うのですが、大麻より副作用も依存性も強い麻薬です。大麻の危険度はオピオイドやタバコよりも低い。嗜好品としての合法化は別として、がんで苦しむ患者さんが100万人もいるのに、医療でモルヒネがOKで、貴重な薬効があり副作用が少ない大麻はダメというのは、非人道的です。今の法律では医学的な研究も認められていない。大麻の医療使用についての議論は待ったなしです」(鹿島院長)
これらを踏まえ、厚労省麻薬対策課に取材すると、「大麻については、麻薬に関する単一条約においても、コカイン等と同等の危険な薬物であるスケジュール4にスケジュールされていて、条約に基づいた規制を行っています」とし、今後については「国際的な議論については情報を収集していく」とのことだった。(AERA dot.編集部/井上啓太)