記録的な雨量をもたらす豪雨、台風の巨大化など、日本で水の災害が相次いでいる。昨年9月の台風15号は暴風が猛威をふるい、千葉県の広範囲を停電させた。10月の台風19号は東日本の広い範囲で記録的な雨量となり、100人以上の死者・行方不明者を出した。
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『水害列島』の著書があるリバーフロント研究所技術参与の土屋信行氏は、その理由をこう話す。
「海水の温度が27度を超えると、台風は勢力を弱めずに移動できるようになるとされています。いま、日本全体が温暖化のために亜熱帯化しているので、東日本の海水温度も上昇していると思われます。そのため、台風15号、19号のように、九州や四国を外れて東海や関東に上陸する台風は今後も増えるでしょう」
水害が増えているのは、地球の変化だけではない。日本国内で危険な地域に住む人が増えていることも影響している。
「山梨大学の秦康範准教授の研究によると、1995年から2015年の20年間で、浸水想定区域内の人口が約150万人増えて約3500万人になっています。人口減少時代に入っているのに、人々は水害リスクの高いエリアに移り住んでいるのです」(土屋氏)
現在の日本は、都市部に人口が集中する傾向にある。これまで未利用だった土地に新しく住居やビルが建つことも多く、そこが水害に弱い地域であることもある。堤防や下水管などのハード面の強化が不可欠だが、対策は遅れているという。
「東京のような都市部では『内水氾濫』と『地震洪水』の危険性があります。内水氾濫は、大雨によって排水管や下水管の処理能力を超えて水があふれることで、地下街や地下鉄に水が大量に流入します。地震洪水では、激しい揺れによって堤防が破壊され、ゼロメートル地帯以下のエリアに海水が逆流する。堤防が破壊されると海水の流入を防ぐことは難しく、地震洪水は台風以上の被害を出すと予想されています」(土屋氏)
ただ、いつ、どこで発生するかわからない地震に比べ、水害は天気予報の精度が高まっているので予想しやすい。事前にインフラを整え、大雨時には早めに避難すれば、被害の拡大は防ぐことができる。にもかかわらず、豪雨災害が増えているのはなぜか。