「林野庁も人手不足で、大規模皆伐など環境を破壊する林業者をチェックできていません。『植林すればいい』と言う人もいますが、 木を植えても根っこが根付くまで10~20年はかかり、その間は土砂災害のリスクがあります。生産量を上げることだけを目的とした皆伐は、下流に住む人や未来世代に負の遺産を残すだけです」(橋本氏)
誰も気が付かないうちに日本の山で進んでいる森林破壊。それは、山のふもとに住む人や下流域の町の災害リスクを高めていることになる。そこで、橋本氏はこのような提案をする。
「自分たちの住んでいる町の上流域の山がどうなっているのか。まずはそれを知ることです。また、皆伐されたエリアを記録して、ハザードマップのように周辺の住民に周知することが必要です」
自分の住む地域にどのようなリスクがあるのかは、知っておいて損はない。前出の土屋氏もこう話す。
「災害を防ぎ、被害を減少させるには『地域住民との関わり』が不可欠です。都市部で誰とも関わらずに生きることは気楽かもしれませんが、災害のときには孤立してしまう。まずは、祭りなどの地域のイベントに参加して、ご近所との付き合いを深めてほしい。いずれ近所で災害時に危険な場所の情報や被災後の対策の話も出るようになります。その情報が、いざという時に自分自身を守ることにつながります」
津波に代表されるように、水の力を前に人間は無力だ。だからこそ、一人で立ち向かうのではなく、多くの仲間をつくることが大切だ。(AERA dot.編集部・西岡千史)