「ホンマに良かったなぁ」
22日日曜の夜から1週間以上経っても、関西の芸人さんやお笑い関係者と話すたび、今でもこの言葉があいさつ代わりになっている。
クドクド言わずとも、みんながこれだけで何のことか分かる。「M-1グランプリ2019」での「ミルクボーイ」(内海崇、駒場孝)の優勝だ。
優勝直後から50件以上のオファーが殺到し「一瞬で来春まで休みがない状況になった」(吉本興業担当者)というが、それだけ一気に仕事が入れられるというのは、これまでほとんど仕事が入っていなかったからに他ならない。
週に4~5日は休みで、テレビ番組の前説や劇場出番がちょこちょこと入る感じのスケジュール。その状況からの戴冠はこれまでのどの王者よりもドラマチックでもあり、今回ほど芸人仲間から祝福された「M-1」王者はいないと断言できる。
優勝翌日の23日。二人がホームグラウンドとする大阪・難波の「よしもと漫才劇場」の出番があり、凱旋出演した。その取材にも行ったが、会場の盛り上がりはもちろんのこと、新聞の原稿締め切り時間的には非常に厳しい夜の取材だったにも関わらず、多くの記者が駆けつけていた。
同劇場の出演メンバーの中では芸歴的にはかなり上の方にあたるものの、劇場ポスターには二人の写真が小さく、小さく、載せられているだけ。これまでの彼らの立ち位置を示すようなポスターが貼られた空間で、多くの記者に囲まれ、写真を撮られている姿を見て、改めて一夜にして何もかもが変わったことを実感した。
なかなか仕事には恵まれなかったが、内海、駒場とも人柄は抜群。仕事の本数とは裏腹に、若手の中でも随一と言われたのが“先輩芸人との食事の回数”だ。特に、駒場は多くの先輩から誘いを受け、とりわけ可愛がってきたのが今田耕司だった。
番組には出演していないのに、テレビ局に駒場がいるという状況を何度も見てきた。今田の収録終わりに合わせてスタジオ近くで待機し、出てきた今田とともに食事に行く。そんな流れが数年前まではいつもの風景となっていた。