ただ、ここ2~3年はその光景を見ることがなくなり、今田からの誘いも断って漫才に注力してきた。

「ネタ作りのための時間を作るというのももちろんあるけど、今田さんと一緒にいると、エエご飯も食べさせてもらえるし、周りが売れっ子ばかりだから、自分も売れっ子になったような気にもなる。ただ、現実としては何も売れていない。ここの“かりそめの満足感”みたいなところを排除して、等身大の自分と向き合う。誘いを断った一番大きな理由は、実はそこにあるとも聞いています」(関西を拠点にする中堅芸人)

 きちんと飢餓感と向き合うことで、今の自分をしっかり見つめる。ただ、人との繋がりが何より大切な芸人の世界において、これまでの関係をリセットして距離を置くというのは、相当な覚悟を要する決断でもあった。

 優勝決定後、今田は「これまで食事の誘いなども断って、漫才に没頭してきました」と努めて客観的に話していたが、苦悩を誰より知るのが今田。本当なら感情をむき出しにして喜びたいところだろうが、司会者として冷静に語る姿にグッときたという芸人も多かった。

 また、二人のトレードマークとも言える内海の角刈りと駒場のマッチョボディー。ここにも意外な繋がりがあった。

 内海が角刈りにする理髪店があるのは大阪の下町、塚本。また、駒場がアルバイトとして現在も籍を置くジムも塚本にある。

 内海が角刈りにしたのは2017年2月からだが、その当時から通っているのが塚本の理髪店。理髪師としての技能を競う大会で上位に入賞したこともある実力者のオーナーがいると聞いて店に行ったが、その日から、オーナーが「彼は見込みがある」と角刈り代金2000円を出世払いという形で一切取らずに今日まで調髪してきた。

 また、駒場がアルバイトをするジムも、駒場が自らのトレーニングも無料でできる上に、それを仕事にもできる。そして、芸人ならではの急な仕事にも対応できるよう、極めて自由度の高いシフトで駒場をバックアップしてきた。

 まさに、今の「ミルクボーイ」を形づくった二つの拠点とも言えるが、なんとこの理髪店のオーナーの息子さんがジムのオーナー。合縁奇縁とはまさにこのこと。あらゆる縁に支えられ、今回の戴冠が達成された。

 年々進化を続ける「M-1」で、史上最高得点をたたき出して優勝した「ミルクボーイ」。これまでの苦労の何百倍も光を浴びることは間違いない。そして、その光に目を細める人たちの数は計り知れない。

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?