「ドクターX~外科医・大門未知子~」のすごさは、ターゲットをしぼり切っているところだと思う。「60歳以上の男女」だけが相手。地上波ドラマを見るのってその世代だけよね、というキッパリした割り切りだ。私は58歳だが概ねそこ世代なので、ついつい見てしまう。
そもそも新手の「水戸黄門」だ。大門(米倉涼子)という黄門さまが対峙する越後屋は、黄門さまの職場のトップである東帝大学病院院長(西田敏行)。その新鮮さと安心感に加え、飽きさせないための仕掛けも万全で、それがターゲット好みのゲストだ。
オンエア中の「シーズン6」の場合、初回のゲストが松坂慶子で以後、角野卓造(3話)、倍賞美津子(4話)、岩下志麻(5話)。岩下さんは大物看護師なのだが、家族にも決して背中を見せない。若き日に愛したのがヤクザの親分で、刺青を入れているのだ。画面に向かって「極妻か!」と叫ぶターゲットたちの姿が、目に見えるようだ。
だからこそ、この時代に20%近い視聴率を稼ぐわけで、そんな高視聴率ドラマへの出演を断る人などいないだろう。だから大物ゲストもどんどん出演OKとなり、まさに「勝ちが勝ちをよぶ」構図。たまには若い患者の回もあるが、その場合も「朝ドラ」で見たことのある俳優だったりして、これまたターゲット心をよくわかっている。内山聖子エグゼクティブプロデューサー、さすが過ぎる。
そして最新のオンエアは9話。最終回の一つ手前で大いに盛り上げていきたい回、映えあるゲストは……。宇崎竜童さんだった!
なぜ「!」かと言うと、好きだったのです、学生時代。どれだけ好きだったかは、おいおい書いていくとして、とにかく番組の狙い通りに拝見した。
そして結論。宇崎さん、すっごくいい人だった。だって明らかに「矢沢永吉」とわかるロックスターの役を引き受けるって、いい人しかしないでしょ。
宇崎さんが演じたのは、超大物ロッカーの「九藤勇次」。通称「勇ちゃん」。「ゆうちゃん」と言えば石原裕次郎の「裕ちゃん」もいるが、「勇ちゃん」の発音はそっちではなく「永ちゃん」と同じ。勇ちゃんには生き様を描いた著書もあり、タイトルは『たたきあげ』。ターゲット世代なら、全員が『成りあがり』を思い出したはずだ。
矢沢さんのことは詳しくない。でもファンが首に巻くタオルとか、九藤が口にする「男は夢売ってナンボだろ」とか「ナンバーワンのプライドだよ」などなどの台詞は、明らかに矢沢さん風味だろう。九藤は実はお金はないそうで、別居しているという妻に「グレイトどころか火の車なんです」と言われていた。ターゲット世代としては、矢沢さんって借金が有名だったなーなどと思ったり。