また、高卒2年目の村上宗隆に対しては、彼の最大の魅力である長打力を消してしまわないようにとの思いから「今年は打率と三振は気にしなくていい」と言い続け、どれだけ三振しようとも「何でも一番を目指せ」と逆にはっぱをかけた。結果的に打率はリーグワーストの.231、三振はリーグ新記録の184を数えた村上だが、10代の選手としては歴代最多の36本塁打、96打点で、見事に新人王に輝いている。

 今年のセ・リーグのチーム打率No.1は中日の.263で、「石井コーチが在籍する球団」の打率トップは4年連続で途切れた。巨人はその中日に次いでチーム打率2位だったが、得点は前述のとおりチーム打率最下位のヤクルトと7点しか違わない。打撃コーチとして広島の連覇を支え、ヤクルトの2位躍進を後押しした男は、今度は野手総合コーチの肩書で、セ・リーグのディフェンディングチャンピオンをどのように進化させていくのだろうか。(文・菊田康彦)

●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。