その共通した「もっと」の思いをどれだけ結合させ、融和させ、カタチに昇華していくか。来シーズンに向けて、より競争力のあるマシンを作っていくか。その戦いはすでに始まっている。現在進行形で来シーズンのマシン開発は進んでいて、来年の2月には完成させなければいけない。また、この記事が配信される2019年12月4日にはアブダビでオフシーズンテストの2日目が行われる。

 現状のマシンからより多くのデータを引き出し、来シーズンのマシンにフィードバックさせなければいけない。F1にオフシーズンはないのだ。ホンダ・レッドブル陣営のレースは今もなお、絶え間なくハイスピードで続いている。

 筆者は、F1のマシン制作は林業によく似ていると考えている。

 林業は自然を相手にした産業だ。如何にして自然現象と接し、コントロールし、長い時間をかけてノウハウを溜め、効率よく質の良い木材を提供するか。森林からのデータを丁寧に集め、枝打ちや間伐などをこなし、手間暇をかけてじっくりと環境を整えて、休むことなく作業を続けていく。

 F1も空気抵抗や摩擦、爆発や重力などという自然現象をコントロールしなければいけない。効率よくエネルギーを引き出し、効率よく空気を切り裂き、効率よく重量を配分し、質の良いスピードをドライバーに提供する。そのためには膨大なデータとノウハウ、労力を必要とする。それを長い間、絶え間なく作業することで実現させている。

 短期間であっという間にできることではない。膨大なトライ&エラーを繰り返し、その作業に休みはない。木を育てることと、マシンを育てること。自然現象と接すること。個人的には似ていると思っている。時間をかけて大地に根を張り、幹を育て、枝葉が伸びて、大樹になる。F1マシンも同じことではないか。メルセデスやフェラーリ、ルノーに比べてホンダはまだまだ若木だ。

 しかしながら、ホンダとレッドブル陣営の成長速度はとても速い。若い組み合わせだからこそ、勢いがある。伸びる時には抵抗があるが、その抵抗に打ち勝った。ブラジルGPではまさかのワンツーフィニッシュも勝ち取った。大地にしっかりと根を張れたからこそ、ホンダとレッドブル陣営には互いに敬意をもったジョイントが生まれ、マシンも順調に成長したのだろう。

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レースは終わっても戦いに終わりはない