“ぶっ飛んだ”要素が満載の野球漫画『エース』(集英社)
“ぶっ飛んだ”要素が満載の野球漫画『エース』(集英社)
この記事の写真をすべて見る
キャプテン翼などの名作で知られる高橋陽一氏(撮影/今田俊)
キャプテン翼などの名作で知られる高橋陽一氏(撮影/今田俊)

 日本のみならず、海外のサッカー少年にも大きな影響を与え続ける人気漫画『キャプテン翼』。昨年4月から約1年に渡って、現代風にアレンジされたアニメが放映されるなど、世代を超えて愛される名作スポーツ漫画だ。

【大谷翔平は「デフォルメが必要ない体」と絶賛。高橋陽一先生の写真はこちら!】

 キャプテン翼の魅力、それはなんといっても作中に登場する“現実離れ”した超絶テクニックの数々。主人公の大空翼らが繰り出す、ありえないプレーは少年たちを熱狂させ、子供の頃にマネをしようと試みた人も少なくないはず。海外でも人気を誇る同作品だが、一方で「サッカーを知らない日本人だから、こんな作品を生み出せるんだ」と、かつてはサッカー不毛の地だった日本を揶揄されたこともあったという。

 その指摘は必ずしも的外れではなく、実際に作者の高橋陽一先生は高校時代までは軟式野球部に所属しており、サッカーは観戦するのが好きだった程度だったとのこと。だから、こんな“独創的”なものをサッカー漫画に取り入れられたのかと思いきや……。かつて高橋先生が書き下ろした『エース』という野球漫画も、なかなか“ぶっ飛んだ”作品となっているのは、皆さんご存知だろうか。

 まず、『エース』のストーリーを紹介しよう。主人公・相羽一八(あいば・かずや)は、もともとは野球一家に生まれたが、プロ入りも期待された叔父がライバルだった一八の父から目に死球を受け、失明してしまうという悲劇が起こる。父親もそのショックにより一時野球を離れていたが、情熱が抑えきれず野球界に復帰。だが、その初戦で金属バットに雷が落ち帰らぬ人となってしまった……。

 そんな悲劇の連続もあり、祖父からは「野球に呪われた血筋」として、野球を禁止され、一八は転校先の若宮小学校では当初は陸上部に所属していた。その後、人数が9人に満たない野球部から抑えきれなかった野球への気持ちを刺激され、野球部への入部を決断。そこからストーリーが展開していく。少し無理やりな部分もあるが、ここまでは、そこまで“ぶっ飛んだ”要素はない。

 ただ、主人公・一八を取り巻く他チームのライバルたちはとにかく濃い。一八が入部した若宮ファイターズは、負ければ野球部解散となる城東地区大会への参加を果たすのだが、一回戦で激突する領南バファローズの選手たちは強烈だ。

次のページ
強烈な“個性”を持つライバルたち