原稿を書くのにネットは天敵です。  今も、この原稿を書くのに、ちょっと調べ物をしようとしていたのですが、いつの間にか、「そうか、『秘密戦隊ゴレンジャー』の機関車仮面の登場回は上原正三さんの脚本だったのか」などと確認している。  俺は、ハリウッドの脚本家連盟のことを調べようと思っていたのに。  まあ、まだ脚本家つながりなだけましですけどね。  日本テレビの昔のドラマを調べていた俺が、なぜ、東京のたい焼き事情のまとめを見ているんだとか、そういうことがままあります。

 去年の年末、もう『シレンとラギ』を本格的にやらんとまずいぞという時期だったのですが、なかなか進まない。  昼からPCの前に座り、取りかかっているはずなのに全く進んでいない。  その代わり、ロシアにやたらヌードになって政府に抗議する女性達がいるとか、妙に世界の細かいニュースにばかり詳しくなっている。  どうでもいい世界面白ニュースのサイトを観ていたのですね。  でなければ、無駄にツイート数ばかりが上がってたりとか。  すっかりネットに負けている自分がいました。 「このままでは、さすがにまずい。だが俺はネットの誘惑には負ける。素直にそれを認めよう」  もう無駄な抵抗をしている時間はありませんでした。  ネットがあるからつなぐのだ。ないところで仕事すればいい、というわけで、それから昼間はもっぱら近所のカフェやファーストフードで仕事をしています。  無線LANがある店も多いのですが、そんなこともあろうかと僕のMacBook Airは、無線LANの設定をしていない。まったくAirの利点を生かしていないのですが、仕事するにはこれがいい。  おかげで、なんとか『シレンとラギ』をあげ、『フォーゼ』のシナリオ〆切とも戦っています。
  
 ところがこの間、慄然とするニュースが、ネットに流れました。  全世界のスターバックスが、脚本家の立入りを禁止するというのです。(記事元はこちら。)  シナリオライターはコーヒー一杯でずっとねばって、しかも絶望的なオーラを出して、 周りをいやな雰囲気にする(ものすごい意訳)から、今後全世界のスタバには立ち入らせないと。  いやあ、これはショックです。  今後スタバでは仕事が出来なくなる。  レジで「お客様、脚本家ですか」ときかれて「はい」と答えると、いきなりショットガンをつきつけられて「5数えるうちに、この店から出て行け。このウジ虫野郎」とか言われるのでしょうか。  それとも、 「おまたせしました。お客様ご注文のソイフルリーフチャイティーラテのグランデと誓約書でございます」 「誓約書?」 「はい。この店では、シナリオを一文字足りと書かないという誓約書です。違反された場合は、訴訟になりますのでご注意ください」  とか言われちゃうんだろうか。  でも、待て。元記事には「Screenwriters」と書いてある。これは映画のシナリオのことだ。俺は劇作家だから関係ないよね,と言えばセーフだ。  なんていう話を、ああでもないこうでもないと、知り合いの脚本家達とツイッターでやりとりしました。

 まあ、このニュースは冗談でしょうが、しかし、あながちあり得ない話でもない。  こちらとしても、「同じ店に毎日行くと『あ、また来た』と思われるから、せめて二日に一回のローテーションにしよう」とか、混み具合を見ながら「混んできたからそろそろもういっぱいお茶を飲もう」とか「この店には二時間くらいの滞在にしよう」とか、細かく考えているのです。  それだけ周りのことを考えてるから、結局集中出来なくて、仕事にならなかったというコントみたいな落ちになるわけでもなく、原稿は結構進むんですよね、これが。  どれだけ俺はネットの魔力に弱いんだよという話なのですが、それでもこのやり方で、とりあえず新感線の新作と『仮面ライダーフォーゼ』のシナリオその他諸々の〆切を乗り切っているので、当分の間はカフェ彷徨が続きそうです。