行方不明だった大阪市住吉区の小学6年の女児(12)が、23日に栃木県小山市内で保護された。大阪府警は同日、小山市に住む職業不詳、伊藤仁士容疑者(35)を未成年者誘拐の疑いで緊急逮捕した。
府警によると、女児は容疑者宅を午前10時ごろに出て、午後1時半ごろに交番に駆け込んだ。報道によると、複数の人が、靴下で歩いていた女児を目撃している。
雨が降っていた事件当時、どんよりとした寒空の下を、女児はどんな思いで歩き続けたのか。歩いた可能性のある周辺を、記者がたどった。
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容疑者逮捕から2日が経過した25日。容疑者宅の周辺には、依然として多くの報道陣がつめかけていた。現場は東北新幹線も停車するJR小山駅から、車で10分ほどの距離にある住宅街。交通量の多い幹線道路が近くを通り、ときおり現場付近に車が入ってくる。どの通行人も、40人はくだらない報道陣の大群にぎょっとしていた。
近隣住民も驚きを隠せない。
「事件が起きるような場所ではないと思っていたのでびっくりです。(伊藤容疑者については)小中学校までは見かけていました。大人しくて真面目そうな印象で、あいさつすれば返してくれたのを覚えています。こんなことになるなんて…」(70代女性)
中学生のとき剣道に取り組んでいたという伊藤容疑者。指導にあたった剣道教室の男性はこう振り返る。
「与えられた練習をきちっとこなす子でした。練習は休まないし、掃除も一生懸命やっていた。素振りでは、回数を重ねると普通は手を抜くものなのですが、彼は最後まで全力で振り続けていたと思う。『伊藤は最後までちゃんとやっていたよ』とみんなの前で褒めたこともあります」
そんな伊藤容疑者の自宅に7日間にわたりいた女児。助けを求めた交番までは、大人なら徒歩10分ほどの距離だ。確かな足取りは不明だが、現場から交番までの道のりを歩いた。
まず、容疑者宅から東に向かって約200メートル歩く。突き当りを右折すると、広々とした公園が現れた。奥には子どもの遊具も見えた。だが、園内は閑散としている。その中で一人、ウォーキングしている男性(70)がいた。