そんな状況でも、球場に駆けつけてくれたファンに敬意を示したのがアメリカ代表の選手数人と、オースラリア代表で唯一メジャーでの実績があるピーター・モイラン投手。試合前にベンチからわざわざ出てきてファンにサインをするなど、ほっこりする場面もあった。

 また、今回アメリカ代表に選出され、日本のオリックスでプレーするディクソンは、ファンの声援に手を挙げて反応していた。さらに、オリックスのユニフォームを着て来場していた女性ファンのところに歩み寄り、サインをする“神対応”も。この日の観客は少なかったが、ディクソンは確実にファンを増やしたであろう。

 そんな中で始まった試合は、互いの投手力を考えると乱打戦になるかと思いきや、意外にも投手戦に。特にオーストラリア代表は幾度となく守備で好プレーを見せ、野球の試合としては非常に引き締まった好ゲームとなったが……。一方で、球場は驚くほど“静か”なものとなった。

 というのも、ファンの数が少ないことで静かな環境が出来上がってしまい、少し大きな声で話そうものなら周りに丸聞こえになりそうなほどだった。元来、周りの環境を気にする日本人の気質も出てしまい、ひそひそ話をしながら観戦をするファンの姿もあった。日本であれば鳴り物の応援もあり、基本的に球場で観戦する場合は、声を張って話しても聞き取りにくい場合もあるが、この日はそういったものとは無縁だった。

 だが、これだけ静かになったことで、選手が試合中に話す声や、ベンチにいるコーチが外野手に指示する際の口笛が聞こえたりと、普段は味わえない試合の臨場感も感じられた。アメリカ側のベンチ内で鳴った電話の音が聞こえてくる場面もあるぐらいだった。

 そして、試合はテンポよく進みあっという間に終了。序盤のリードを守り切ったオーストラリア代表が勝利した。一方敗れたアメリカ代表はこの時点で優勝の可能性がなくなり、その後のメキシコとの3位決定戦にも敗れ、東京五輪の出場権を逃している。

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野球は世界的なスポーツになれるのか?