アインシュタインの稲田直樹。コンビとしての実力も高い評価を得ている(C)朝日新聞社
アインシュタインの稲田直樹。コンビとしての実力も高い評価を得ている(C)朝日新聞社

 吉本興業に所属する男性芸人の中で、一番の男前とブサイクは誰なのかを一般投票で決める「よしもと男前ブサイクランキング」が4年ぶりに復活することになった。

 2000年に吉本興業の広報誌『マンスリーよしもと』で始まったこの企画は、2015年まで毎年行われる恒例行事だったのだが、ここ数年は実施されていなかった。人の外見を笑いのネタにすることに対して、世間の目が厳しくなってきたことも影響していたのかもしれない。

 10月23日に行われた開催発表会見で舞台に上がった「ブサイクランキング」殿堂入りのほんこんは、時代に逆行した企画であることに言及しながらも「それでお客さんに笑っていただけたら何でもいい」と語っていた。「人の見た目を笑いものにするのは良くない」という正論に対して、芸人としての率直な本音を漏らしているようだった。

 お笑いの世界では「ブサイク芸人」と言われる人たちがいる。彼らはほかの芸人などからその見た目をイジられることが多い。それにどう対応するのかは人によって違う。

 例えば、先ごろ女優の蒼井優との電撃結婚を果たして「ブサイク芸人の希望の星」と言われた山里亮太は、自虐ネタを得意とするタイプだ。ブサイクであることをイジられると、落ち込んで悲しそうな顔をしたり、逆に開き直って噛み付いたりする。山里はイケメンや美女やリア充に対する嫉妬心が強く、それを積極的にネタにしている。

 一方、「ブサイク芸人」と言われても一切意に介さず、自分に酔っているタイプもいる。NON STYLEの井上裕介がその典型だ。先輩芸人から見た目をイジられても平然とした顔で反論して、笑い飛ばす。そのことで相手がすっかりしらけていても気にしない。これを本物のイケメンがやっていたらさすがに鼻につくだろう。井上がそれほどではないからこそ、このような態度が一種のネタとして成立しているのだ。つまり、これはこれで、一周回ってそのブサイクさを芸人としての武器にしていると言える。

 フットボールアワーの岩尾望は「ブサイク芸人」の代名詞のような存在だが、自分ではそれを認めていないし、自らネタにすることもほとんどない。だが、相方の後藤輝基はそんな岩尾を容赦なくイジり倒す。岩尾におじぎをさせて薄い頭頂部があらわになったところで「ハゲとるやないかい!」とツッコむという恐るべきコンビネーションもある。岩尾は「不本意ながらブサイクをイジられている」というタイプだ。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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