サンダースの場合、2011年にウォール街を占拠したオキュパイ運動の人々の流れが強い。英国も、労働組合や協同組合の活動がさかんで、コービンを支える草の根の組織「モメンタム」が非常に活発です。
――その意味で、れいわ新選組が問題の現場にいる当事者たちを候補に立て、2議席を得たことは、新しい“兆し”にも見えます。「れいわ旋風」をどう評価しますか。
社会運動とつながりがなく、エリートたちだけで政治をしていた旧民主党に比べると、大いに進歩していると思います。太郎さんが参議院議員時代の6年間、貧困、労働、障害者問題などの現場に足を運んだ成果です。独自のネットワークから9人の当事者を候補に立て、運動と政治のつながりを作ろうとしたことはすばらしい。旧民主党の政治家たちとはそこが違う。
ただし、「れいわ旋風」と呼んで持ち上げすぎる傾向には“違和感”があります。れいわの公約は経済が中心で、気候変動の話はどこにもありません。気候変動の影響を過小評価しているのではないでしょうか。
また、「れいわに投票すれば日本の政治が変わる」「選挙に行けば、政治が変わる」というのは幻想です。数年に1度の国政選挙だけで盛り上がったところで、下から支える運動がなければ、誰がリーダーになっても、結局は失望するだけです。
──山本代表は、「総理大臣になる」と宣言しています。
欧米のポピュリズム運動は、個々のテーマで協力者を少しずつ増やす地道な活動を続けています。裏を返せば、サンダースやコービンがいなくなっても、草の根の組織があるので運動は継続できる。米国史上最年少の下院議員になったアレクサンドリア・オカシオ=コルテスのような新しいリーダー候補にバトンを渡すこともできる。
一方、れいわ新選組は山本太郎さんのカリスマ性への依存が強く、下からの運動が支えているとは言いがたい。むしろ太郎さんが、運動を耕し、育てている段階です。とはいえ、社会運動を耕し、政治とつなげようとした点ではものすごく大きな前進です。もはや、日本でも左派ポピュリズムの力は否定できなくなっています。