日本にとって痛かったのは、南アフリカに特に狙われていた司令塔の田村が前半半ばに肋骨を痛めたこと。空いたスペースにボールを運ぶ本来の低く速いパスがなりを潜めてしまった。

 後半、南アフリカはスタンドオフのハンドレ・ポラードが4分、9分、24分とペナルティーゴールを決めて3-14とし、じりじりと日本を引き離す。一方、日本は8分についに田村が退き、反撃の糸口をなかなかつかめない。

 26分、南アフリカはハーフライン手前の自陣のラインアウトからモールを組むと、そのまま30メートルも前進。交替出場のフッカー、マルコム・マークスがサイドを突き、この試合のプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(最優秀選手)に選ばれたスクラムハーフのファフ・デクラークがトライ。スタンドオフのポラードがコンバージョンゴールを決めて南アフリカが21-3と差を広げた。さらに、30分にも日本のボールを奪ってマピンピがトライ(ゴールは失敗)を追加して26-3で試合を決めた。

 日本は地域獲得率で互角、ボール保持率では54パーセントと上回り、ボールを持って攻撃した回数も129と南アフリカの90より多かったが、ラインアウトで自ボールを5回も失うなどセットプレーの劣勢が響き、結果は完敗だった。タックルを受けながらボールをつなぐオフロードの回数は日本の12に対して、南アフリカはわずか2。南アフリカがいかに自分たちの強みを前面に出して、シンプルに前に出ていたがよく分かる数字だった。

 日本のジェイミー・ジョセフヘッドコーチは、試合後の記者会見で「南アフリカは良くやった。ポイント(得点)を逃すことがなかった。(日本も)もう数ポイント取れたと思う。もっと自信を持って行けば良かった。勢いを持つこともプレッシャーを掛けることもできたけど、ものにすることができなかった。勝機に結びつけられなかった。ラグビーではスピードをまずこちらが作らないといけない。セットプレーでもミスをしたし、南アフリカは強かったと思う。オープンなスペースを作り、ディフェンスも強かった」と敗因を語った。大会全体を振り返り、「まずはこの(8強入りの)達成を味わいたい。多くの人たちのたゆみない努力が私たちを結びつけてくれた。私たちが振り返るとファンがいた。ありがとう。応援が力になった」と話した。

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