「不動産業界にはまだまだ、契約させてこそなんぼという考えが存在していて、お客さまの視点に立てる営業マンが極端に少ないと感じます。悪徳と呼ばれる会社の手法で、特にお客さまが引っかかりやすいのが「おとり物件」です。実際にはない好条件の部屋を店頭などに堂々と掲げて、来店したお客さまには他の部屋を押し付ける手法です。他にも洗濯機が置けないような部屋なのに、女性を無理に説得して契約させるようなやり方も。それがつらくなって独立して、今は真逆の営業をしています。まさに永瀬のように、誰よりもまっすぐに、お客さまが幸せになれる部屋探しをしているという自負があります」

正直不動産』には、エアコンが壊れていたお客さまにヒーターを持っていったという鈴木さんのエピソードが収録されている。また、鈴木さんが取材の際に語った言葉も、台詞としても使用されているという。

 この本のように、貸主、借主、売主、の未来を考えて動く不動産屋は稀有だと言う。実際に、「妥協しなくては」「どこを諦めよう」と考えながら不動産屋のドアを叩く人は多いのではないだろうか。しかし、鈴木さんはこう語る。

「諦めは肝心ではありません。不動産屋を選ぶ際は、すぐに諦めポイントを突いて来るような不動産屋は避けてください。また、急いで契約させようとする、物件の悪いところを一切言わない、どう考えてもよくない物件を無理やり勧めてくる、現地待ち合わせなのに内見させてくれないなどは、その時点でアウトです。性格的に自分の主張を言葉にしづらいという人は、信頼できる人と一緒に不動産屋を尋ねるようにしてくださいね。

 私も著者の大谷さんも不動産で騙される人を減らしたいと、心から願い、日々邁進しています。でも、業界が本当に変わっていくのはこれからの話。ですから、お客さまになる方々も、厳しい目で業界を見て欲しい。そのためにもぜひ『正直不動産』や拙著を参考にして欲しいですね」