九州戯曲賞の選考会に行ってきました。
 九州地方で活躍している劇作家を対象に行われているこの戯曲賞も、今年で三回目。
 最初に比べれば慣れてきた感はあります。
 
 去年までサラリーマンだったこともあり、劇作家協会などのように他の劇作家のみなさんと一緒に何かをするという機会は、この選考会に参加するまでは、ほとんどありませんでした。
 他の劇作家のみなさんはどういう読み方をするのだろう。意見が合わずに激論になったりするのだろうかと、最初の年は、かなりドキドキして選考会に臨んだのを覚えています。
 でも、ふたを開けてみれば、実に面白かった。
 自分たちが作っている作品の方向性こそ違え、候補作に関しての意見はおおむね変わりないことがわかったこともあります。僕が「書けていないな」と思う部分は、だいたい他の人たちにとっても書けていないという意見でした。
 僕には理解できないタイプの作品を、他の作家が自分には持ち得ない視点から読み解いていくという場面もあり、新鮮な体験でした。

 特に松田正隆さんの視点は全然違う。
 違うことが面白い。なにより彼の佇まいが面白い。
 僕は彼の舞台を観たことがありません。多分、松田さんも僕の舞台を観たことはないでしょう。
 舞台の上で観客の前でパフォーマンスするという点だけは一緒でも、全然違う方向性の作品がたくさんある。それも演劇の面白さです。
 でも、違うからこそ面白いんだと思います。
 まあ、これが自分達の作品を俎上に載せてだと、さすがに感情的になる部分があると思いますが、戯曲賞の選考というシーンだから、真摯でありながら客観性も保てるという、いいバランスで論議ができるのだとも思います。
  
 今年は、松田さん、土田英生さん、古城十忍さんという過去参加経験がある方に加えて、永井愛さんが参加なさっていました。
 女性だし先輩だし、どういう発言をなさるのか楽しみでした。
 ただ、今回残念だったのは、最終候補作五本のうち、突出していたのは二本。残りの三本との差ははっきりしていた。これは誰の目にも明らかだったようで、五人の審査員の視点の差があまりでなかったこと。
「ああ、この作品は、そういう読み方ができるんだ」という発見が少なかったのが、物足りないといえば物足りないところでした。

 大賞を受賞された島田佳代さんは、去年の最終候補作でも残った方。
 去年の九州戯曲賞の時にこのコラムで触れた、鹿児島の人口三万程度の町で演劇活動を行っている方です。
 自分が書いた作品を上演したいがキャストが揃わないため舞台化できないなど、状況的にはいろいろ難しい中で活動しているということは、去年聞いていました。
 その人が戯曲を書き続け、しかも今作は昨年の作品に比べれば、はるかにうまくなっていた。それが嬉しかった。
 厳しい状況でしょうが、この賞の受賞が、彼女の活動にとってなにかの助けになればいいなと願います。