外野手でもう一人推したいのがルーキーの辰己涼介(楽天)だ。豊富な外野手陣の中にあって一年目からレギュラーをつかみ、打率こそ低いもののここまで72安打、13盗塁をマークしている。盗塁失敗がわずかに3という成功率の高さも見事だ。そしてそれ以上に素晴らしいのが外野の守備である。大学時代から時折凡ミスはあるものの、高い運動能力を生かした守備範囲の広さと、不十分な体勢からでも強く正確に投げられるスローイングは間違いなく12球団でもトップレベル。補殺数もチームトップとなる6を記録しており、チームのピンチを救う場面も多かった。高いレベルで揉まれることで、その才能が更に開花することも期待できる。
一方の投手は山本由伸(オリックス)が若手の筆頭となるが、同じ高校卒3年目では種市篤暉(ロッテ)も先発候補として面白い存在だ。150キロ前後の力のあるストレートで押して、フォークで三振を奪うという本格派らしいピッチングが持ち味。116回2/3を投げて135奪三振をマークしており、奪三振率10.41はパ・リーグで5勝以上している投手の中では千賀滉大(ソフトバンク)の11.33に次ぐ数字となっている。今シーズン、パ・リーグは規定投球回数に到達している投手がわずか4人で、セ・リーグも菅野智之(巨人)、大瀬良大地(広島)といった実績のある先発投手が軒並み成績を落としているだけに、貴重な若手の先発候補として期待したい選手である。
リリーフでは中川皓太(巨人)を推したい。今年は中継ぎ、抑えとして66試合に登板とフル回転し、チームの救世主的な存在となった。スリークォーター気味の腕の振りから投げ込むサウスポーらしいボールの角度が持ち味で、スピードもコンスタントに140キロ台後半をマークする。ストレートと同じ軌道から打者の手元で鋭く変化するスライダーを決め球にイニング数を上回る奪三振をマークした。また四球からピンチを招くケースも少なく、コントロールが安定しているというのも非常に心強い。手薄な左のリリーフ候補としてピックアップしたい選手である。
プレミア12で優勝することも大事だが、来年は地元開催の東京オリンピック、再来年にはWBCが控えていることを考えると、先を見越した選手起用も重要になってくる。そういう意味では周東以外にも積極的に若手を抜擢する場としてこの大会を活用することを期待したい。(文・西尾典文)
●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。