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昭和から平成を彩る数々のファイトでファンを沸かせた「ミスター・プロレス」、天龍源一郎さん。2017年に取材した記事「天龍源一郎『2年前に引退してから、何もすることがない』」では、あえて無趣味を楽しむ平穏な日々について語っていました。
50年に及ぶ格闘人生を無事に終え、「今は何もしないことが幸せ」と話していた天龍さんも、来年には70歳という節目の年を迎えます。この度AERA dot.で新連載を始めるにあたって現在の心境を伺おうとしたところ、天龍さんの口をついて出たのは、先日発表され大きな反響を集めた、脳梗塞の告白でした――。
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「腹いっぱいのプロレス人生」を終えてから、今年で4年が経つね。実は今、若者に声を大にして伝えたいことがあるんだ。それは、「自分のやっていることに自信を持って、一生懸命に生きろ!」ということ。
今回は、これまで自分の好き勝手に人生を過ごしてきた天龍源一郎が、なぜこんな殊勝なことを考えるようになったのかを話そうと思う。それは、4月に初めて発症し、今日までに3度も入院するはめになった、脳梗塞という病気が俺の生き方をがらりと変えてしまったからなんだ。
今思えば、最初にその兆候を自覚したのは4月も終わるころだった。女房とランチを食べた帰り道に、突然立ち眩みがしてね。まっすぐ歩いているつもりなのに、なぜか身体が右のほうへと寄っていっちゃう。身体のバランスを保つことができないのを自覚できたけど、俺は脊柱管狭窄(きょうさく)症の手術をしたこともあるし、もともと足腰の状態も万全ではないからね。「まあ大丈夫だろう」って判断して、その日はやり過ごしたんだよ。
翌日、まだ立ち眩みがするから女房に声をかけたら、眼球がサーって揺れ動いてたんだって。そんな状態を見て女房はピンときたようで、かかりつけの医者に、「こんなことが起きてる」って相談していたみたい。
その後風呂に入ったら、また身体のバランスが崩れちゃって。ちょうど買い物に出かけた女房から、電話がかかってきて。「昨日と同じで身体が右に傾いちゃう」って答えたんだけど、もう呂律が回らないんだよ。翌朝病院から、「すぐに来てください」と電話をもらって飛んで行ったら、MRIの画像を見た先生が、「天龍さん、すでに2回、脳梗塞になった痕跡がありますよ」だって。診断の結果は小脳梗塞。それで、即入院することになったんだ。