5日午前11時40分ごろ、横浜市神奈川区の京急電鉄京急本線の神奈川新町~仲木戸間にある「神奈川新町第一踏切」で、青砥発三崎口行きの快特電車(8両編成)が神奈川新町駅を通過直後、線路に進入してきたトラックと衝突した。京急電鉄によると、先頭車両が脱線して傾き、2両目、3両目も脱線しているという。
横浜市消防局によるとトラックの運転手とみられる男性1人が死亡、乗客ら31人以上の重軽傷者が出ているという(5日15時現在)。現場近くの目撃者から「火が出ている」という通報があり、先頭車両周辺からは黒煙が上がっていたという。
この事故の影響で京急本線は、京急川崎~上大岡駅間の上下線で運転を見合わせている。
京急電鉄は、踏切での衝突事故や線路上への土砂崩れに遭遇した際、電車の転覆を防ぐため、伝統的に先頭車となる編成両端にモーター付きの車両を連結している。一般的に京急以外の鉄道会社では先頭車にモーターのない車両を用いることが多いが、モーターの付いた車両は重く、重心が低いため、衝突時のダメージが少ない。
今回事故に遭った1000形編成では、先頭車のモーター付きデハ1000形の重量は33トン、これに対して2・3両目のサハ1000形は27トン・23トンと軽い。先頭車がモーターなしの車両だった場合、電車側のダメージは大きく、さらに被害が拡大した可能性も高い。また、京急の線路幅は1435ミリメートルの新幹線と同じ標準軌を採用しており、JRなどの1067ミリメートル狭軌に比べ、安定性が高いとされている。
京急がモーター付きの車両を先頭に置いてきたのは、比較的カーブが多い線形にかかわらず、並行するJRへの対抗策として、快特は最高時速120キロ、特急以下は110キロの高速運転を行っていることによる。
横浜方面へ向かう快特の場合、事故があった神奈川新町第一踏切を含む京急川崎~横浜間では、時速120キロに達することもしばしばある。今回の事故も、時速120キロ近いスピードで電車とトラックが衝突した可能性がある。
2012年9月24日、京急本線追浜~京急田浦間で、時速約75キロで走行中の1500形特急(8両編成)が、線路上に崩れた土砂に乗り上げ、1~3両目が脱線し、重傷者10人・軽傷者44人を出したものの、転覆を免れた。先頭車両が重いモーター付きだったことも、大きな要因だとされている。(文/武田元秀)