「花粉症薬が保険適用外に」というニュースが、8月下旬に話題になりました。これが正式に決まるとどういうことになるのでしょうか? 著書『心にしみる皮膚の話』が好評発売中の京都大学医学部特定准教授の大塚篤司医師が解説します。
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「花粉症に対する抗アレルギー薬が保険適用外」というニュースに大きな反響がありました。これはまだ決まったわけではなく、企業の健康保険組合からなる健康保険組合連合会(健保連、けんぽれん)が、2020年度の診療報酬改定にむけて秋から開催される中央社会保険医療協議会で提起する内容の一部です。
17年度の医療費は42.2兆円。ここ数年は年間2%の割合で費用が増えています。医療費の増加は人口の高齢化に加え高額薬剤の登場による影響もあります。医療費削減は毎年マスコミで取り上げられるテーマの一つです。
大々的に取り上げられた健保連の「花粉症に対する抗アレルギー薬が保険適用外」ですが、皮膚科でも抗アレルギー薬を頻用します。例えば、じんましんやアトピー性皮膚炎など、かゆみを伴う皮膚疾患の患者さんには抗アレルギー剤を処方します。皮膚疾患を治療するうえで抗アレルギー薬は大事な武器の一つです。
健保連は、この提言以外に診療報酬改定に向けて五つの提案をしています。
今回のコラムでは、健保連が提案した五つの政策提言を、一つずつ解説したいと思います。
【1】機能強化加算のあり方についての検討
機能強化加算とは18年度に施行された、診療所(クリニック)や200床未満の病院の初診料に上乗せされた費用です。保険点数は80点(1点10円)、つまり800円。3割負担の場合は240円が患者さんの自己負担になります。
機能強化加算を請求している医療機関は、地域のかかりつけ医として機能し、夜間や休日の問い合わせへの対応を行っている医療機関になります。この加算を設けることで、かかりつけ医制度を普及させる狙いです。
かかりつけ医制度とは、いきなり専門の診療科に行くのではなく、まずは相談できる地域の医師をつくる制度のことを指します。
大学病院などの高度な専門分野では、限られたリソースを必要としている患者に回す必要があるため、かかりつけ医の普及が重要です。