一方、今回の企画は単純にネタが弱い。学生時代に二股をかけていたというのは、仮に事実だとしても話として薄すぎる。この弱いネタをスタジオで展開させるための工夫も足りない。本人たちが否定している上に、尺も十分に取れていないので盛り上がりようがない。生放送の現場で盛り上がっていないものを、テレビを通して見ても楽しめるはずがないのである。

 なぜこういうことになってしまったのか。考えられる理由の1つは、収録番組のやり方で生放送の番組を作ってしまったのではないか、ということだ。日本テレビには高視聴率のバラエティ番組がたくさんあり、その多くは似たようなフォーマットで作られている。分かりやすくまとまった内容のVTRが流され、それを題材にしてスタジオでトークが展開される、というものだ。

 これらの番組は生放送ではないので、視聴者が受ける印象を編集によってあとからコントロールすることができる。極論すれば、たとえスタジオの現場が盛り上がっていなかったとしても、面白いくだりやセリフだけを切り取って笑い声を足してまとめることで、あたかも現場が大盛りあがりしたように見せることも可能なのだ。

 もちろんどこの局のバラエティでも基本的には同じことが行われているのだが、それを最も緻密にやって安定した視聴率を稼いでいるのが日本テレビなのである。

 そんな日本テレビの制作陣は今回、生放送のバラエティで弱さを露呈してしまった。収録番組と同じようなやり方で作ると、どうしても現場のゆるい空気が伝わってしまう。また、恐らく初めから「いま人気のEXITをネタにして何か暴露ネタを仕込めないか」という発想で企画を考えているので、どうしても無理のあるネタになりやすい。収録ならば編集によってある程度はその無理をごまかせるのだが、生放送だとどうしてもごまかし切れず、不自然さが出てしまう。

 個人的には、今回の件はヤラセかどうかということよりも、そもそも面白くなかったことが気になる。正直なところ、「24時間テレビ」のバラエティ枠では、こういう物足りなさを感じることが多い。チャリティー番組だということが足かせになっていて、お笑い路線の攻めた企画ができないという事情でもあるのだろうか。愛が地球を救うのもいいけれど、笑いに救われたい視聴者もいるということを覚えておいてほしい。(ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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