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「久しぶりなので、X線写真を撮りましょう」。定期検診で歯医者に行くとこのようなことを言われます。そもそも、歯科ではなぜ定期的にX線写真を撮るのでしょうか? また、頻繁に撮影した場合、被曝の心配はないのでしょうか? 『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか? 聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中の歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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X線写真を撮る一番の理由は肉眼で見えないむし歯や歯周病を発見することです。内臓などと違い、「口の中は外から見えるので、歯科医師だったらわかるだろう」と思うかもしれませんが、実際にはそうではありません。
例えば歯と歯の間にできたむし歯。歯の表面には一切、異常はなく、きれいなのにX線で撮影すると奥のほうで、まさに虫がリンゴの中をかじったように歯が侵食され、大きな穴が開いているのが見つかり、驚くことがあります。
X線写真では歯や骨(歯槽骨)は白くうつり、むし歯になった部分はカルシウムが減ってスカスカになるために薄く、黒っぽく見えます。しかし、初期のむし歯はX線写真でもなかなか見つけにくいです。
歯周病は進行すると歯を支えている歯槽骨が失われていきます。歯周ポケットの深さを調べることである程度の予測はつきますが、X線写真の結果と総合することで、より進行具合がわかります。歯槽骨がかなり深いところまでなくなり、複数の歯が喪失寸前、というケースも決して珍しくありません。
X線写真では健康な歯の場合、エナメル質(歯の白い部分)が終わるあたりから1ミリくらい下に歯槽骨があり、これが白く見えます。一方、歯周病で歯槽骨が失われているとこの部分が黒く抜けてしまっているのです。歯槽骨はあってもものすごく下のほうで、細い歯の根がかろうじて生えている様子がわかります。
X線写真で痛みの原因が噛み合わせの異常とわかることもあります。上下の噛み合わせが悪く、歯に異常な力がかかってゆさぶられると歯根と歯槽骨の間にあり、クッションの役割をしている歯根膜が広がっている様子が写真に映るからです。