今年も甲子園出場をかけた夏の熱い戦いが全国で行われているが、懐かしい高校野球のニュースも求める方も少なくない。こうした要望にお応えすべく、「思い出甲子園 真夏の高校野球B級ニュース事件簿」(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、全国高校野球選手権大会の地方予選で起こった“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「ゲームセットはまだ早い!編」だ。
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劇的な逆転サヨナラ弾でゲームセットと思いきや、ベンチから飛び出した選手が走者と接触したことを理由に、「アウトではないか?」と34分も揉めたのが、2006年の岐阜県大会4回戦、岐阜城北vs県岐阜商だ。
注目の強豪同士の対決は、センバツ4強の岐阜城北が9回表を終わって3対2とリード。一方、2年ぶりの甲子園を狙う県岐阜商はその裏、先頭の兼松真也が死球、1死から丹羽健太も四球を選ぶが、2度にわたる送りバント失敗で2死一、二塁と攻めきれない。だが、あと1人で敗戦という土壇場で、3番・長尾雄人が尾藤竜一(元巨人)の速球に食らいつき、左越えに逆転サヨナラ3ランを放った。
5対3で奇跡の逆転サヨナラ勝ちと思われたが、本塁打の直後、大喜びで三塁ベンチを飛び出した県岐阜商の選手が本塁に生還する前の走者に接触したことから、岐阜城北側は「走者の援助でアウトではないか」と猛抗議し、試合後の整列を拒否した。
当初審判側が「(接触を)見ていない」と答えておきながら、途中から「走者との接触はあったが、走塁援助にはあたらない」と説明の内容を変えたことも、話をこじれさせた。しかし、最終的に岐阜城北側も矛を収め、県岐阜商の逆転サヨナラ勝ちでゲームセットとなった。
試合後、岐阜城北の太田恵太主将は、県岐阜商の藤田豊平主将に千羽鶴を手渡し、「絶対甲子園へ行け!」と激励。「必ず行ってお前らの分まで頑張ってやる」と応えた県岐阜商ナインは準々決勝以降の3試合を勝ち抜いて、見事約束をはたした。