誕生時の0系1等車は「京都鉄道博物館」に保存されている。客室とデッキを仕切る側壁には雑誌の入ったマガジンラックがあり、外国人にも利用されていたように、今も残る特別な雰囲気が印象に残った。座席の座り心地は現在の車両よりも柔らかめで、体が沈み込む感触が心地よかった。リクライニング角度も大きく、その重厚な座り心地に感激した。

 テーブルは肘掛けから引き出す形で、サイズは小さく小物しか載せられなかったが、肘掛けの幅は広く(在来線より約2cm広い)、布カバーもかけられており高級感があった。

 フットレストは高さを調整でき、足を載せる片面は靴を履いて使い、裏返すと靴を脱いで使うモケット側の面が出てきた。

 現在の目で見ても1等車座席の座り心地は優れており、金色の座席を中心としたインテリアにも、わかりやすい特別感がある。

■シルバークラスが想定された2等(普通)車

 2等車の座席に移る。「シルバークラス」を想定された座席であり、銀色を基調として青をアクセントにした涼しげな座席である。在来線よりも広い座席幅を活用した2人掛け+3人掛けの座席配置となっており、座席幅は430mm。座席間隔は940mmだった(最新のE5系やN700系では2人掛けが440mm、3人掛け中央席のみ460mm、座席間隔1040mm)。

 筆者は現役時代に何度か座ったが、当時の在来線特急は座席間隔910mmなので、前後がやや広く感じた。座席間隔940mmでは3人掛け座席の回転が不可能なため、背もたれを前後して向きを変える転換式クロスシートが採用された。

 座り心地については、人間工学の見地から形状が決められた座席だけあって、座布団部分も背もたれの転換に合わせて動き、膝が高くお尻が低くなるように傾く。現在の目線で見ても、比較的良好な座り心地だと言える。

 在来線の2等車には背もたれの後ろ側にテーブルと灰皿があったが、背もたれの両面を使う転換式クロスシートでは、座席背面への設置は困難だ。このため、通路側肘掛けにテーブルと灰皿、窓側側壁に小型テーブルが設置された。第4次車からは窓側・中間肘掛けにも灰皿が設置されている。14次車からは背ずりがやや高くなり、座布団部分も各席で独立させるなど、細かな改良が続けられた座席でもあった。

 なお、この座席はとても大量に製造された。そのことから、国鉄が通勤電車に体が不自由な人向けの優先席を色分けして設置しようと考えた際に、浜松工場に大量にストックがあった銀のモケットを流用した。その結果、優先席は「シルバーシート」と命名されたというエピソードも残されている。

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