■松本山雅 D

 19試合で24失点と粘り強く戦えていないわけではないが、ここまで10得点、あまりに流れからのゴールが遠すぎる。攻撃に関しては組み立て、チャンスメーク、フィニッシュと全ての面で足りていない状況で、組織的な守備をベースとして維持しながら、どう攻撃を引き上げていくかが困難なテーマとして残されている。もちろん伝統的な強みであるセットプレーからも得点を増やしたい。前田大然のゴールがオフサイドで無効と判定される“大誤審”に泣いた第19節の磐田戦は不運だったが、終盤にゴールを奪われ押し切られたのは松本の現状を露呈している。長身FWのレアンドロ・ペレイラを欠くと前線の起点が、俊足の前田を欠くと前からの守備やゴール前の迫力が下がるなど、一人一人の主力の依存度が高いことも後半戦を考えると危うい。浮上するための課題の多さは降格圏の勝ち点17で並ぶ磐田と鳥栖より深刻かもしれないが、松本には反町康治という経験豊富な勝負師がいる。夏の補強も重要だが、接戦で粘り強く勝ち点を拾いながら何とか残留を果たせば、次のシーズンに向けてさらに体力を付けることは可能だ。新加入のFW阪野豊史が、得点力不足の解消に一役買えるかに期待がかかる。

■名古屋グランパス C

 常に相手からボールの主導権を握ってゴールを目指していく風間八宏監督のスタイルは着実に浸透しており、ジョアン・シミッチや米本拓司といった新戦力もすんなりとフィットしたことで、序盤戦から順調に勝利を重ねた。しかし、一度崩れると歯止めが利かなくなるリスクと隣り合わせなのも“風間サッカー”の傾向で、ルヴァン杯、天皇杯を含めて公式戦6連敗という結果にも出てしまっている。相変わらずバイタルエリアの手前までボールを運ぶことはできているが、そこから先のところで攻めきれず、逆に少ないチャンスから確実に失点している“負のスパイラル”が続く。夏場で運動量も厳しくなる中で、4-4-2からアンカーにエドゥアルド・ネットを配置する3-3-2-2にシフトしたが、結果に結びついていない。正確な左足のキックを備える太田宏介を加え、さらなる補強もあるかもしれない。何れにしてもエースのジョーは健在であり、ここまで5得点の彼がゴール前で決定力を発揮できるシチュエーションをより増やしたい。ここに来て守備の要として支えて来た丸山祐市が負傷欠場するなど、主力の耐久力の部分でも苦しくなっているが、能力の高い選手は揃っている。補強の動向も気になるが、トゥーロン国際を経験した相馬勇紀などが真の意味でブレイクする好機でもある。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行