これも腐敗を防ぐ方法なのだが、本土からやってきた人は、そこで立ち止まってしまう。
「サンマを揚げていいんだろうか」
寿司天ぷらもその流れのなかにある。生ものはやはり足が早いのだ。
しかし寿司である。
ところが困ったことに、これがいい味を出している。酢飯と油は意外と相性がいい。マグロとも合う。本土の人間が抱えもってしまった寿司へのこだわりを捨てれば、一級の料理に映る。いや、沖縄ジャンクか。
那覇に行くと、寿司天ぷらの味を思い出してしまう。
5月。喜作のテーブルに座った。メニューを開く。
「ない……」
おそらく寿司天ぷらと印刷されたところに目隠しシールが貼られていた。寿司にうるさい本土の人から横やりが入ったのだろうか。
「あの、以前、寿司天ぷらがあったと思うんですけど」
小声で訊いてみる。
「ありますよー。何個揚げましょうか。おなかにたまるから、3個ぐらい?」
屈託のない沖縄を前に、目隠しシールを貼った理由はとても訊けなかった。