ただ難しいのは、その一方で吃音それ自体に悩んでいる人だ。そもそも吃音の悩みは、(1)吃音を避けようとすることで困難を感じている、(2)吃音があるということ自体に困難を感じている、この二つがあるが、両者を区別できる人はあまりおらず、混同してしまうことがある。そして後者の悩みの割合が大きい人に対しては、「どもっても話しましょう」というアプローチだけでは難しい部分がある。
「普段は普通に話せている人でも、吃音を持っているということで悩む人もいます。たとえ周りの理解が得られたとしても自分が自分を許せない、コンプレックスになっているという人もいるでしょう。しかし言葉はあくまで道具です。ですからそういった患者さんには、道具の修理ばかりするよりも、修理できた範囲で道具をどう使うかが大事ですよ、とお伝えしています」(富里医師)
では、実際に吃音で困っている人はどこに行けばいいのか。
子どもの場合はかかりつけの小児科や療育センターが窓口になるが、一度電話をして吃音を診てくれるかどうかを問い合わせてから受診するのが望ましい。大人の場合は、前述した日本最大の吃音当事者団体・言友会が頼りになると、自身も言友会の会員である富里医師は言う。「特定非営利活動法人全国言友会連絡協議会」のホームページから、地域別の言友会を確認することができる。
映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」のキャッチコピーは、「伝わらなくてもいい。伝えたいと思った――。」。
話し方にこだわらず、「どもっても、思ったことをしゃべろうよ」となる社会が、徐々に近づいているのかもしれない。(文/白石圭)
◯富里周太(とみさと・しゅうた)医師/国立成育医療研究センター・耳鼻咽喉科。映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」吃音監修。
○特定非営利活動法人 全国言友会連絡協議会
(全国の地域別の言友会のリンク集)
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