多芸多才のチョコレートプラネットは「TTポーズ」でもブレーク中(C)朝日新聞社
多芸多才のチョコレートプラネットは「TTポーズ」でもブレーク中(C)朝日新聞社
この記事の写真をすべて見る

 7月1日、ニホンモニターから『2019上半期テレビ出演本数ランキング』が発表された。それと同時に『2019上半期ブレイクタレント』として、昨年の同時期と比べて番組出演本数の伸びが大きかったタレントも発表されている。

【『2019上半期ブレイクタレント』1位は…】

『2019上半期ブレイクタレント』の上位10組を見ていくと、お笑い界からは、『M-1グランプリ』王者の霜降り明星が1位、和田アキ子のものまねを得意とするMr.シャチホコが3位、実は真面目なチャラ男漫才師のEXITが4位、IKKOと和泉元彌のものまねで話題のチョコレートプラネットが5位にランクインしている。2019年上半期にブレークした芸人は誰なのかと言われたら、彼らの名前を挙げれば間違いはないということになる。

 ただ、この顔ぶれを見ると、いわゆる「一発屋芸人」という雰囲気の人が少ないことに気付く。「ゲッツ!」のダンディ坂野、「そんなの関係ねえ!」の小島よしおのように、特定のキャラやギャグで人気に火が付き、どの番組に出てもそれを求められる、という感じの芸人がほとんどいない。

 例えば、霜降り明星は言わずと知れた『M-1』と『R-1』の二冠チャンピオンであり、その圧倒的な才能はすでに業界内外で認められている。チョコレートプラネットも世間ではものまねのイメージが強いかもしれないが、もともとコントの実力者として知られていて、『キングオブコント』でもたびたび決勝に進んでいる。軽薄なチャラ男キャラのEXITですら、それぞれがもともと別のコンビで解散を経験しているため、意外と芸歴は長く、ぽっと出の一発屋予備軍という感じではない。

 そもそも、特定のキャラやギャグを売りにして一時期にテレビに出まくって、その後消えていってしまう「一発屋芸人」は、近年のテレビではほとんど見かけなくなっている。なぜ一発屋芸人は減ってしまったのだろうか。

 理由は大きく分けて3つ考えられる。1つは、そういうタイプの芸人を育てる番組が減っているということだ。一発屋芸人が大量に輩出されていたのは、2000年代後半のお笑いブームの時期である。この頃には、プライムタイムに『エンタの神様』(日本テレビ系)や『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)というネタ番組がレギュラー放送されていて、芸人が大量に出ていた。

 のちに一発屋芸人と呼ばれた芸人の多くは、これらの番組から世に出てきた。彼らは、これらの番組に何度も出演してネタを披露してきた。そこでキャラやギャグが認知されて、その実績をベースにしてほかの番組にもどんどん出ていく、という流れがあった。

 2019年7月現在、テレビのゴールデンタイムやプライムタイムにはそのようなネタ番組が存在していない。だから、特定の芸人がある番組で注目されて一時期だけ話題になることはあっても、その波がほかの場所まで広がりにくいのである。

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら
次のページ
一発屋芸人が出てこない=お笑い界にとって悪いことではない