自身の家族とは20年前から顔を合わせていない。40代のひきこもりの息子を殺害した元事務次官の父、熊沢英昭容疑者は何を思っていたのかと繰り返し考えている。
「あの父親はいろんな角度から考えたのだと思います。日本のトップ官僚としてこんなことで練馬区の行政を煩わせてはいけない、家庭内で処理することが一国民としての責任の取り方だと考えたのかもしれない。そうだとしたら『ひきこもりを恥と考える根拠は何ですか?』と聞いてみたい。取り調べが終わったら、ぜひ『ひきこもり親子 公開対論』でその苦悩を語ってもらいたい。それが彼にとって罪を償う一つの方法だと思うんです。そして家族から恥の意識を取り払うことが、日本のひきこもり問題の解決への近道なのではないかと考えています」
親子が家族が本音で向き合い、お互いを知る場をつくる。お金にならない“仕事”を背負いながら、池井多さんは今日もひきこもっている。(AERA dot編集部・金城珠代)