「科学」と「学習」の休刊が決まったというニュースを聞いて、深い感慨を持つのはどの世代まででしょうか。
1960年代後半から70年代初めに小学生だった僕などは、かなりのショックでした。
この二冊は、学研の代名詞ともいえる、小学生の学年別学習雑誌です。
僕らの時代は、学校の教室で直接販売していました。授業が終了したあと、担任の先生が注文した生徒に渡していく。代金を忘れると先生が保管するので、一刻でも早く読みたい子供たちは真剣です。前の日に手にメモして親にお金をもらうのを忘れないようにしたりしていました。
その名の通り「科学」は理科と算数の記事が中心でなんといっても付録が魅力的でした。家に帰るまであけてはならないと先生からはきつく言い渡されていましたが、必ず守らない子はいた。
青写真セットとか風で走る車のおもちゃなど、学校帰りにあけてみんなで遊んでいました。
「学習」は国語・社会を中心とした雑誌で、読み物はこちらのほうがおもしろかった。
なので僕は「学習」派でした。
「学習」には、夏休みや冬休み前に「読み物特集号」という増刊号がありました。通常号よりも分厚くて、読み切りの小説がたくさん載っていて、楽しみにしていたものです。
ただ、付録の人気から、「科学」を取っている子供の方が多かったですね。たまに両方買っている子がいて、これは本当にうらやましかった。
かくいう自分も、どういう親の気まぐれか、小学校四年生ごろに一年だけ両方とってもらったことがありました。これは幸せだったなあ。
高度成長期とは言え、今振り返ってみると、まだ決して豊かとは言えない時代でした。特に僕の育ったのは炭鉱町で、石炭から石油へと移行する時代だったため、閉山のため人口流出が多く、町の経済は下り坂だったのです。
そんな中、「科学」と「学習」」の両方が買えるというのは、かなりの贅沢なのですね、子供にとっては。教室で受け取る時もなんとなく誇らしかった。
でも、教育上は問題があったのかもしれません。買える子と買えない子が教室ではっきりわかるので、差別を助長するという意見が出ても不思議ではない。
公取委の指摘があったか何かで、僕らが中学になった頃に家庭への直販になりました。
世代が下の人間は、いわゆる「学研のおばちゃん」が届けるこのスタイルの方が思い出深いかもしれません。
ただ、「科学」と「学習」という雑誌に独特の思い入れがあるのは、やっぱり教室で先生から手渡されていたからだと思います。
学習雑誌とはいえ、マンガや小説も載っている本を先生からもらう。
それは、本屋で買う小学館の「小学○年生」とは全く異なる感覚だったのですね。先生も認めている、オフィシャル感とでもいえばいいのでしょうか。
マンガは子供が読むもの。
学校の先生は偉いもの。
大人の会話に子供が口出ししちゃいけない
テレビは茶の間に一台で、チャンネル権は父親にあるし、九時以降は子供は観ちゃいけない。
そんなふうに、大人と子供、先生と生徒、親と子供、そういう壁がしっかりあった時代の懐かしい思い出です。
「科学」と「学習」がなくなると聞いてショックを受けたのは、完全にあの時代がなくなったように思えたからかもしれませんね。