実は、過去の米国大統領訪日でも“密約”があった。鈴木教授は続ける。

「2014年4月に来日したオバマ氏(当時は米大統領)は、安倍首相と一緒に銀座の高級すし店で夕食をともにしました。その時にTPP交渉で議論されていた農産物の関税引き下げについて、オバマ氏と秘密合意をしたと一部で報道されました。安倍政権はその事実を認めませんでしたが、同年12月に安倍首相は解散総選挙を実施して、再び圧勝。その後、オバマ氏との密約の内容がTPP交渉で次々と実現していきました」

 当時の報道によると、すしを食べながら“密約”を交わしたのは、牛肉や豚肉の関税についてだった。牛肉を38.5%から9%に、豚肉は安い部位で1キログラムあたり482円の関税を50円に引き下げることで実質合意した。TPP反対は、12年に自民と公明が政権に返り咲いたときの公約だ。テレビではオバマ氏がすしを食べる様子がさかんに報道されていた裏では、安倍首相が公約破りの大幅譲歩していたのだ。

 そういった経緯があるからだろう。国民民主党の玉木雄一郎代表は27日、「(トランプ氏と)密約的に約束を交わして、国民に明らかにするのは選挙の後というのは、我が国の国民や国会をだます結果としてなってしまう」と警告した。一方、河野太郎外相は「交渉は(TPP以上の関税引き下げはないと定めた)共同声明の枠組みで行われる」(28日参院外交委員会)と説明したものの、5年前と同じで参院選後になれば前回と同じように国民との約束をひっくり返す可能性は十分にある。

■接待外交の裏で国会では重大法案が審議中

 隠したいのは日米の貿易交渉の中身だけではない。国内では、国民の生活に深く関わる法案がまもなく成立しようとしている。

 参院では現在、国民の共有財産である国有林で、最長50年にわたって大規模に木材を伐採・販売する権利を民間業者に与える国有林野管理経営法の改正案が審議されている。

 12年に第2次安倍政権が発足してから、政府は農業や漁業の第一次産業や空港や水道など公共インフラを「民間開放」する政策を進めてきた。今回の法改正も、その一連の流れに位置づけられている。最長50年の伐採期間は世界的にも例がないことから、法案に反対する林業関係者からは「国土切り売りだ」との批判が起きている。

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国会審議も異例の展開