■「お前らの思う通りにはしねぇよ、絶対!」(故・三沢光晴)
平成13年(01年)年3月2日、両国国技館。故・橋本真也が立ち上げた新団体プロレスリングZERO‐ONE旗揚げ戦のメインイベント後、リング上で起こった乱闘時の言葉。
故・ジャイアント馬場の全日本プロレスで育った三沢は、プロレスリング・ノアを立ち上げ『王道』を継承。あくまでリング上での戦いを重要視してきた。対して橋本は猪木の新日本プロレス出身。メディアなどを使いリング外もプロレスに積極的に活用。それら方法論などが真っ向から異なる両者がリング上で対峙した際、三沢は自らの信念を貫くことを宣言した。
■「またぐなよ」(長州力)
『邪道』大仁田厚がターゲットにしたのは、当時、現役引退していた長州力。
約1カ月後に対戦は決定していたが、それを電流爆破マッチでおこなうよう要求するため、平成12年(00年)6月30日に新日本海老名大会(神奈川)を訪れた。
大仁田を見つけた長州は、「入るな。入るなよ。またぐな。またぐな絶対に」と練習中のリングフェンス内への立ち入りを絶対許さない姿勢を見せた。
プロレス中継で強烈なインパクトを残したのはやはり、新日本プロレスのテレビ朝日系、古舘伊知郎氏と全日本プロレスの日本テレビ系、『ジャストミート』福澤朗氏ではないか。(古舘氏は昭和のイメージも強いが……)
2人に共通しているのは、いわば『自己プロデュースの実況担当者』。まさにプロ中のプロなのだ。あらかじめ何を語るか、言葉やタイミングなどすべてを周到に準備する。まるでそこに台本が用意されているかのようである。
レスラーと同様、演者。語り手でありながら演出家。この2人は、それ以後のプロレス実況の根幹のようなものを作り上げたようにも思える。
もちろん古舘氏、福澤氏だけではない。どの実況担当者そして解説陣も個性豊かで味があった。入念な取材活動や準備も伝わってきた。しかしレスラー同様、伝え手側も人間である。ハプニングや、とっさの言葉に心を動かされたことも多かった。 キャッチーな言葉というのは、ある時、突然発せられる。